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第59話「ハルの管理能力」

「おはぎ全部食べちゃったな」 「え、もうないの?」 「ないよ」 最後のひとつを2人で食べたところだった。 家族が帰ってきた金曜日に、しばらく顔を見せていなかった智幸は冬理、奈津香、哲朗に頭を下げて謝り、その日は一緒に過ごした。 突然付き合ったなんて事は口が裂けても言えなかったが、晴也は夏休み中は智幸の家で過ごす事を3人に伝え、別段何も疑わない家族達は「りょうかーい」と言って了承してくれた。 (そろそろ3時間経つな) 「ユキ」 晴也はと言うと、彼の中で「授乳」と呼んでいる智幸に乳首を吸わせる時間の調整がここ2日でだいぶ慣れてきていた。 「ん?」 智幸もまた、今まで触れたくても触れる事ができなかった存在に存分に甘やかされる事で、数年間抱えていた苛立ちや頭の中の靄が消え、骨を抜かれたように穏やかでふにゃふにゃな性格に変わってしまった。 「おっぱいの時間」 ニコ、と晴也が笑う。 「っ、、ハル、やじゃない?」 ゴク、と明らかに吸いたそうに唾を飲んでから、智幸は晴也に恐る恐る聞いた。 「ん?」 「きっちり3時間おきにしてくれてるの、疲れない?やにならない?」 そんな事は絶対にないと理解しているものの、智幸は未だにフラれないかと不安になっているのだ。 智幸の家のソファの上に寝転び、脚を絡め合っていた2人が起き上がるとちょうど向かい合わせに座る形になった。 日曜日、午後14時過ぎ。 昼飯は先程インスタントラーメンで済ませた。 祖母の家から家族が持って帰ってきたおはぎも食べ終えて寛ぎ始めたところで、3時間が来た。 「ならないよ」 それにギリギリ3時間なのだ。 智幸は少しでも3時間を過ぎると、途端にしょげるか、何か少しでも気に障るとイライラし始める。 「ごめんね、ハル」 「そんなにしゅんとしなくていいよ。俺がしたくてしてるんだし」 晴也はソファの上であぐらをかき、後ろに左手をついてつんのめりながら、右手でゆっくりとTシャツと捲っていく。 「ユキは俺にずーっと甘やかされてれば良いんだよ。赤ちゃんなんだから」 怪しく笑う口元に、今すぐ噛みつきたくなって来る。 智幸はそうやって優しく乳首を吸う時間に誘われるたび、股間が熱くなって仕方がなかった。 (セックスしたい) けれど、捲り上げたTシャツの下から覗く晴也の白い肌に、昨夜散々抱いたときにつけたキスマークの鬱血した痕が何個も残っているのが目に入る。 (絶対無理させてる、お尻だって本当は痛いのに我慢してる気がする、、セックスは、今日は我慢、我慢) グッと下唇を噛み、露わになったピン、と立った乳首を見つめた。 (ハルの乳首、、ハルの乳首だ、ハル、ハル) 今すぐむしゃぶりつきたくなる欲求を、何とか抑え込んだ。 「は、ハル、」 「どした?吸わないの?おっぱいいらない?」 「あっ、!」 セックスがしたくなるからと、授乳されるのを我慢しようとしていた智幸の膝の上に近づいて来た晴也が乗っかる。 目の前で膝立ちされると、丁度胸が顔の前に来てしまった。 「あ、あ、、」 思わず声が漏れる。 「ユキのお口、どこだっけ?」 「だ、だめ、ハル、我慢、、我慢したいの、ハルのおっぱい、」 「んー?何で?」 ピン、と立った乳首が目の前にある。 乳輪はふっくらと膨らんでいて、その上にいつもしゃぶりついているそれがついている。 晴也は左手でTシャツを鎖骨のあたりに止めながら、右手で右の胸を下から持ち上げて掴み、すぐそこにある固まっている智幸の口元に近づけた。 「ユキくん」 甘ったるい声は智幸を誘惑している。 晴也から子供扱いをされるたび、智幸は苛立つなんてことはまったくなく、逆に甘やかしてもらえると言う合図に股間が反応していた。 「ハル、やめてっ、、ハルの負担減らしたい、俺、俺、、甘やかされ過ぎて、さ、3時間空けるのも、やになって来てて」 「それで?」 「ずっと吸ってたいよ、ハルが学校行くのも嫌なんだよ、ハルが部活行くのだって辛いんだよ、も、やめて、、」 グズグスと泣き出した智幸の唇に、ちょん、と乳首を当てて晴也が笑う。 それはとても意地が悪い笑みだった。 「だから我慢するの?」 「だってハルに嫌われたくない、ハルが大変になるのも嫌だ、あ、おっぱい、あ、やめてよ、ハル、吸いたくなっちゃうから、ぅあ、」 唇にぷにぷにとあたる彼の乳首に、智幸は思わず勃起した股間を両手で抑える。 「乳離れ?」 「いやだ!!おっぱいないと死んじゃう、だから、それも嫌だ、絶対嫌だ」 「、、ユキ」 ふぅん、とため息をついた晴也に、智幸はべそをかきながらその顔を見上げる。 「全部やなのか」 「ぜ、全部いやだ、、ハル、ハルう」 「よしよし、良い子だね。俺のことも考えてくれてるんだよね。でもねユキくん、そんなに思い詰めなくて良いよ」 そう言うなり、唇に当てていた乳首を、グッと智幸の口に押し付け、無理矢理口内に入れた。 「んむっ、!」 「ユキくんのお口ここかな?ちゅーちゅーできる?」 「んっ、だめ、ハルっ」 「ユキくんのお口はここですか?教えてくれないと分かんないよ」 「ンッ、こ、ここ、ユキのお口、ここだよ、ハルくん、ちゅーちゅーできるよ、見てて、んっ」 「あんっ、こら、急に強く、ぅあっ、こら、ユキっ」 我慢していたそれを無理矢理吸わされて、智幸は耐えられなくなって夢中で乳首を吸い始める。 晴也はそんな彼を見下ろして満足げに微笑みながらも、吸われるたびに伝わってくる痺れるような快感に腰を揺らした。 「んっ、ユキ、んっ、部活行く前に、んっ、ギリギリまで、吸ってて良いし、んあっ、部活、帰って来たら、す、すぐ、んっ、玄関で、吸って、いいからっ」 「ハアッ、はあっ、ハル、んっ、ハルッ」 「だから、我慢なんて良いから、負担じゃ、ないからっ、ぁあんっ、だから、俺の乳首、いっぱい、あんっ、ふっ、、いっぱいいっぱい吸って、安心して、ユキ、アッ!」 ドサ、と静かに丁寧にソファに押し倒される。 脚の間に入り、晴也に覆い被さって体重をかけながら乳首を吸っている智幸は、彼の言葉を聞いてヒートアップしたのか、下着の中で勃起したそれを彼の穴に布越しにごりごりと擦り付け始める。 「ハル、はあ、ハル、ハル、ハル」 ぢゅうっ  ぢゅるるっぢゅうっ 「ん、んっ、ユキ、そんなに興奮すんの?」 「する、ハルの乳首吸うたびに、ンッ、ちんこ勃起する」 「あっあっ、やめ、そんなことしちゃダメ、んっ、こら、ユキッ、あぅっ」 ゴッゴッと智幸が晴也の尻の穴めがけて擦っていたそれを腰を振ってぶつけ始めると、布越しに当たる熱に興奮した晴也も息を荒くする。 「ユキ、んっ、ユキ、シたいの?俺の穴に入れたいんだよね?ぁんっ、俺もシたいよ」 「ッ、、俺、我慢してたのに、」 「我慢しなくて良いよ。ハルくんの穴でずぼずぼしよ?」 「は、ハルくん、の、お尻の穴、、ハルくん、ベッドでするから、俺の部屋行こ」 「ん。手繋いで行こうか」 スイッチが入った2人は、指を絡めてソファから下りる。 どちらも勃起したそこを邪魔そうにしながら歩いて、ゆっくりと階段を上って行った。 「ん、、?」 携帯電話の震える音に目を覚ますと、16時を回っていた。 クーラーを付けた部屋の中は涼しく、晴也はタオルケットを腰までしか掛けていない智幸を見下ろしながら起き上がり、起こさないようにそれをかけ直した。 (1時間くらい寝てたか) 鳴っていたのは智幸の携帯電話だったようだ。 晴也は自分のを手に取ってホームボタンを押し、時間と誰かから連絡が来ていないかを確認する。 (あれ?) 光瑠から着信があったと画面に表示されていた。 (あ。明日遊ぼって言ってたからか) メッセージで連絡をくれればいいのに、と思いながら、晴也はベッドから降りて立ち上がり、グッと背伸びをしながら腕を上げ、身体を伸ばした。 バキバキ、と肩甲骨の辺りから音がする。 連絡用アプリには、冬理から「ご飯うちで食べな!おでんだよ!」と、真夏に熱々ご飯を食べる誘いが来ていた。 あとは、御手洗や猪田達とのグループメッセージが次々に更新されている。 とうとう、合コンに行くらしい。 (俺はパス) 返信を打ちながら智幸をチラリと見たが、熟睡している顔を見ると起こしづらかった。 別に夕飯までは寝ていてもいいだろう、と、床に散らばったパンツとズボンを履き、Tシャツを着ると、精液の溜まった口の結ばれた使用済みのゴムを拾い集め、ティッシュで包んで手に持ったまま1階へ降りた。 (起きたときそばにいないとぐずるかな) そんな事も考えたが、セックス中にこれでもかと甘やかした後だ。 多分そんなには不安にならないだろう、とキッチンのゴミ箱にゴムを包んだティッシュを捨てた。 (ご飯はうちで食べるとして、、この家の掃除も割と終わったし、、あ、洗濯機回そう) 主婦並みにマメである晴也は、思い付く家事をさっさと済ませようと風呂場にある洗濯機の元へ向かう。 ピンポーン 「、、え?」 インターホンが鳴ったのは、その途中だった。 智幸の家には誰が来たかを観れる液晶など付いておらず、玄関まで行ってドアを開けて確かめないといけない。 晴也は智幸を起こさず玄関へ向かうと、閉めていたカギを開けてドアを外へ押した。 「はい、、あれ?」 そして、目の前にいる申し訳なさそうな顔をした光瑠と目が合った。 「え、、う、ウシくん?」 「どしたの、光瑠くん。あ、ユキ?」 「ああ、うん、そう、、そうなんだけど、」 光瑠が更に申し訳なさそうな顔をして、チラリと後ろを見る。 それに合わせるように彼の後ろを覗いた晴也は、ぽかんとした顔をした。 「こんにちは、ハルくん」 「、、、あー、そう言う事ね」 晴也にしては低い声が漏れた。 視線の先に、白いふわふわなワンピースを着た原田がいた。

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