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主人公
「もう、起きれるか?」
「これ、飲む?」
青と赤の雰囲気の違うイケメンが、交互に声をかけてきた、自分が風にあおられた瞬間に居合わせたと教えてくれた。
風で、飛ばされた書類を追いかけようとした時に、この二人を見てオレは倒れたのだ。
「はい。まだ口付けてないから。」
そう言って、ペットボトルを渡してきたのは、鮮やかな赤い髪をした赤目の主人公。朝比奈ハル(あさひな はる)人懐っこい雰囲気で、進めるルートで受にも攻にもなっていく。
「あ、ありがとう・・・。!!」
い、イケボだ!!このまだ少年さの残る声、さすが人気受声優!!
ペットボトルを受け取り、体を起こして気が付いた・・・
どうやら、オレは主人公の幼馴染、絶対的攻め様の青桐相馬(あおぎり そうま)に膝枕されていたらしい・・・。
だから、目を覚ました時に青い髪が一番に目に入ったのか。
「!!!!ご、ごめん!!頭、重かったよな。」
目の前のイケメンに驚きつつ、飛び起きると
「いや、こいつよりも軽いから気にするな。」
うっ!イケボ!!
そう、この青桐相馬はこのゲーム内でオレの一推しキャラ!!そして、人気攻声優様!!
ああ、まさかこんな間近で聞けるとは・・・
し、死んでもいい!!!!!ああああ、イケメンイケボ目が耳が幸せ過ぎる!!って、ガイドブックでも見てるかのように頭にこの二人の情報が流れ込んでくる。しかし、本当にイケメンだ・・・
って、なんでこんなところに、乙女ゲームの主人公が??
目の前の二人の情報に顔には出てなかったが、パニックになっていた。
名乗られてもいないのに、名前がわかる・・・なんで? お、オレは一体・・・。一人、頭の中がぐるぐる
「ところで、君は高校からここに通うの?」
うつむいてしまっていたオレの目線に合わせて、にっこりと微笑みながら、鮮やかな赤髪をした朝比奈がそう言いながら書類を手渡してきた。
小さな爆弾を落としながら
「そしたら、僕たちと一緒だね! 三年間よろしくね!」
「!!」
そう
オレは、このゲーム「どきどき★メモリアル★BOY'sサイド」内で、この朝比奈陽をサポートする立場のキャラ佐々木 翼 (ささき つばさ)。髪の色は、どこにでもいる茶色なのに、目の色だけその他モブと違い、グリーン。転生前の記憶が蘇る前は家族と目の色が違う事に特に何も思わなかったけど・・・これは、ゲームにかかわっているキャラの特徴だった。毎朝見ている自分の顔を思い出し、少し納得していた。
「う、うん。よろしく」
差し出された書類を受け取ると、ゲームの主人公が決定的な名前を教えてくれた。
「僕、朝比奈ハル。そっちのは、青桐相馬。君は?」
「オレは、佐々木・・・翼です。」
「佐々木君か~、僕たち同じクラスになれるといいね!!」
「・・・おい、そろそろ行くぞ。」
展望台の影の方を気にしていた青桐に促され、朝比奈達は学校の方へ行ったが、オレはもらった水と書類片手にその場からしばらく動けなかった。
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