「おお！！　これなんか、可愛いじゃないか！」 「そーなんですよ！」 部室で、先日行った映画の時の写真を部長に見せてた。 ショッピングモール内の至所にフォトスポットがあったから、折角なので3人のオフショットを撮らせて貰ったのだ。ついでに朝比奈には、デート風景的な感じでも撮らせて貰った。 いつもは、単独ショットがメインだが、この日は黄瀬も相馬も居たので、2ショット、3ショット撮影もさせて貰ったのだ。本人達も何気にノリノリで撮ってくれたので、つい楽しくなってカメラとは別で、ゲームセンターにある撮影機でも撮影してしまった。 あまりにも、楽しかったので生徒手帳に思わず貼ってあるのは皆には内緒だけど。 「ホント、君は彼らの表情を引き出すのが上手いね」 「・・・そうですか？」 「そうだよ。ほら、君も楽しそうだよ」 部長は、モールのゆるキャラとポーズを照ってる写真を指差した。 「ハル！！河童居る！！」 「はぁ？？　リョウ何言ってんの？？」 「ホントだ！！　河童じゃん！　ほら、相馬も見てって！！」 モール内のイベント広場に、ゆるキャラの河童に似たキャラクターが撮影会をしていたのを、上の階から黄瀬が発見した。そのまま広場迄下りて子供達に混じって見ていたら、スタッフの人がカメラに気が付いて写真を撮ってくれたのだ。 声を掛けられた時は、恥ずかしい~とか色々言ってた朝比奈が、真っ先にカメラ向けられたらモデル立ちし、それを黄瀬が真似、そのあと河童まで真似して、続いて無言で相馬まで・・・ってか、意外と相馬はノリが良い事にも驚いた。その後もイートインではドリンク片手にポーズしたり、歯痛ポーズ、指ハートからの指ピストルポーズとか・・・女子高生が撮るようなポーズまでやってくれたかと思うと、ただ立ってるだけでも絵になったりするから、この3人はやっぱり自分とは違うんだと実感した。 夕日に向かって歩く3人の影が道に長く伸びたショット 何故だか、シャッターを切っていて泣きそうになった。 自分は、この3人とは違うんだと漠然と感じてしまった。 彼らが向けるこの顔は自分が、彼らにとって有益になるキャラクターだから・・・？　 今度は、体育祭が始まる。 朝比奈は、誰のルートに入ったのだろうか？それとも、まだなのかな？ こないだのテストで、朝比奈の順位からだと相馬ルートには順位が少し足りない。部活にはしっかり出てるようだけど・・・。 他の対象者に接触してる感じも無いし、あの2人のどちらかのルートに入ってるのは確実なんだろうなぁ。 「佐々木君？どうかしたかい？」 急に静かになった、翼に部長は声を掛けてくれた。 いつの間に、プリントアウトしたのか翼の横には印刷された写真達が重ねられていた。 「全部、プリントしたんですか？？！」 「君の映ってるやつは持って帰っていいよ~」 そういって手渡された写真達の束に、3人の後ろ姿の写真も入っていた。 「それ、なんかいいね。　コンクールとか出してみる？」 そう言いながら、PC画面に視線を戻して今度は加工を部長は始めていった。 「え？」 「その3人の写真とかさ~、僕はいいと思うんだけど、どう？？」 「・・・そうですか。　部長に任せます。」 心に小さく棘が刺さった気がした。 PC画面を見ていた部長と、翼の見ていた写真と違う事に気が付かないまま部室を後にした。 この日撮った写真は、翼の知らない所で、新聞部の歴代売り上げランキングを塗り変えたのだった・・・・。