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あいつ・・・
咲紀に、相馬の事を聞かれて思わず何も言えなかった。
やっぱり、身内に恋愛の話をするをするのは、恥ずかしい。
それも、妹に!
仲が良くても、さすがにそれは・・・言えない!!
それに、自分は朝比奈の恋をサポートしなければいけないのだから・・・
朝比奈がもし相馬のルートに入っているのなら、オレはそれを応援しなければいけない。それが、オレの役割だから・・・・。
だから、失恋するかも知れないのにこの気持ちを口にする事は、まだ自分には出来ない。口にしなければ、今は側に居られる。
しかし、咲紀に「あいつ」と言われて、また一つ思い出した・・・
佐々木翼の中の記憶にある、金髪碧眼の奇麗な男の子。
幼い頃、父の仕事の都合で海外に少し住んでいた頃よく遊んでいた。
ジュニアスクールで、同じクラスにも居たけどその彼の事を、僕は知らなかった。中学に上がる前に、こっちに戻ってしまったけれど、オレの記憶の中には、確かに存在していた。
佐々木翼の一人称は、オレ。運動神経は、クラスでは平均より少し上。
咲紀が幼い頃はどこへ行くにもついて来て、そんな妹が可愛かった。小学校に上がる頃には、しっかり者へと成長・・・それでも、慕ってくれる妹は本当に可愛い。そう感じていた。それが、このきらめきヶ丘に戻ってくる直前までの記憶。この町は、昔小学校に入る前まで、家族で暮らしていた。その後、海外へ親の仕事の都合で引っ越したけど・・・。それまで、仲の良かった子も何人か居た。
そのうちの一人の子との約束。丘の上での再会の約束・・・。
オレは、その子の事が大好きだった。 けれど、今はもう顔も思い出せない・・・。
けれど、坂本誠の記憶が戻って・・・自分の記憶なのか・・・
ゲームのストーリなのか・・・。または、翼の記憶なのか・・・。
最初は、理解するまで混乱した。思い出した内容を書き留めたノートも、もう3冊目が終わる。最初は、彼らのキャラ設定の様な物だったが、最近は思い出した内容やその時の感情等も書いて自分なりに、整理して書いていた・・・。
坂本誠の一人称は僕。翼と違って、運動神経はあまり良くない。
そして、この体に誠の記憶が蘇って変わったのは、この運動神経の部分。
誠の記憶の中で、あまり運動した記憶が無い所為なのか翼の体になった今も、動かし方が解らない。けれど、基本能力が違うのか練習したらした分は上達する事が出来る様になった。 あと、帰国子女なのに英語が苦手なのは、確実に僕の記憶の所為なんだと思う・・・。
咲紀が言った「あいつ」も、オレは知って居るが、僕は知らなかったからアルバムとかを見て、この記憶は佐々木翼の時の記憶だったんだと理解した。子供の時代の写真しかアルバムには無かったから、今の姿はオレも僕も想像でしか解らないけど・・・。
そんな「あいつ」と、この夏どうやら久々に会う事になるのだ。
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