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その1

きらめきヶ丘が展望出来るホテルの最上階で日課のトレーニングをしていると、書類を片手に秘書が声を掛けて来た。 「相馬様、御依頼されていた件の報告をお持ちいたしました。」 「・・・ああ、そこ置いておいてくれ。」 「畏まりました。・・・失礼します。」 サイドテーブルに書類を置いて秘書は、部屋を出て行った。 ランニングマシンを止め、サイドテーブルに置かれた書類に目を通す ・・・・・、やっぱりか・・・。あの時、見かけたのは、見間違いじゃなかったのか・・・。 翼が押された時、側にいた生徒に見覚えがあった。 まだ、あっちに居ると思ってたんだがな・・・。 秘書が持ってきた書類の他に今朝届けられたディスクを写真を見る。 「少し派手にやり過ぎたか・・・。」 写真に写っている自分を見て思わず、独り言ちってしまう・・・が、その顔は少しも困っている様子は無かった。 ショッピングモールに着くと、前に来た時よりも人が多かった。 こんな時、幼い頃はいつも咲紀と手を繋いで見て回って居たのを思い出した。 同じ事を思い出したのか、咲紀を目が合った。 「結構混んでるけど・・・手でも、繋ぐ?」 「もう! おにぃ、子供じゃないから大丈夫ですぅ~!!」 「だよな、悪い悪い! だから睨むなって・・・」 グイ 何かにシャツの裾を引っ張られた・・・ 「・・・え? なんだ~、咲紀やっぱり・・・え?」 引っ張られた方を向くと、そこには小さな女の子がいた。 「お兄ちゃん・・・じゃ・・・無い!!!!!!」 女の子もどうやら、自分の探していた人物とは違っていた様で、そのまま固まってしまった。そんな女の子の目線に合わせて咲紀がしゃがんで声を掛けた。 「こんにちわ。お兄ちゃんとはぐれちゃったの?」 「…うん。」 「お名前言える? 私は、咲紀っていうの。よろしくね。」 「…あかね。」 「あかねちゃん、お兄ちゃんも探してると思うから、迷子センター行こっか?」 「・・・やだ。・・・あかね、これ見たいの・・・。」 女の子の手に握られていたチラシを受け取ると、イベントスペースでこれからやるゆるキャラのショーの案内だった。どうやらこれを見に来てはぐれてしまったらしい・・・。しかも、ショー開始迄あと10分・・・。 確かに、迷子センターまで行っていたらショーには間に合わないな・・・。 「・・・おにぃ、どうする?」 咲紀も同じ事に気が付いたのか、二人してこちらを見上げてくる・・・。 「うーん・・・。ショー自体もそんな長い時間やってないとは思うし・・・。もしかしたら、この子のお兄さんもそこに探しに来てるかも知れないから、会場に行ってみようか?」 「いいの?!」 さっきまで、心細そうな顔していた、あかねちゃんも嬉しそうに聞いてきた。 少し屈んで頭を撫でてあげると、今度はもじもじして可愛い。 シャツの裾から、手を離してもらい、今度はしっかりと手を繋いでイベントスペースへ向かった。 オレ、あかねちゃん、咲紀の三人でイベントスペースまで歩いて行った。 少し慣れて来たのか、あかねちゃんが手を繋ぎながら、どのゆるキャラが好きだとか、お兄ちゃんの携帯にゆるキャラと撮った写真があってズルいとか・・・色々話をしてくれた。 「お兄ちゃん、ありがとう! そう言えば、お兄ちゃんはお名前なんていうの?」 「あ、そっか。お兄ちゃんは、翼って言うんだよ。」 「翼お兄ちゃん・・・そしたら、つーくんだね!! あかねのお兄ちゃんは、りょーくんって言うのー!」 りょーくん・・・リョウ?? 黄瀬??・・・まさか、そんな偶然あるのか??ふと、りょーくんで浮かんだのが黄瀬の顔だった。そう思うと、あかねちゃんの顔も似ている様な気がしてくる・・・。確か、黄瀬には歳の離れた兄妹がいたはず・・・ いや・・・でも、そんな偶然あるのか??? 思わず、咲紀の方を見てしまう。 「? おにぃ、どうかした??」 「いや・・・」 ってか、こういう所で知り合いの妹に出会う確率ってどれくらいなんだ?いや、でもここは定番スポットで・・・行動範囲が被ればおかしくないのか・・・?けど・・・ 「あかねちゃん・・・上のお名前はなんて言うのかな?」 「うえ??」 「お兄ちゃんは、佐々木翼って言うんだけど・・・。」 「あー! あかねは、きせって言うよ~。 あと、4さい!」 うん。黄瀬って言ったね。りょーくんはリョウで間違いないな。 ポケットから携帯を取り出し、電話をかけた。 「・・・おにぃ?」 「つーくん??」 二人が心配そうにこっちを見ている姿が・・・なんか、可愛い。 コールしてすぐに、焦った様子の黄瀬が電話に出た。 「あ!!翼!? 今、ちょっと急いでて・・・」 「それって、妹さん探してる??」 「え!?・・・それ、なんで???」 「今、一緒にいるんだけど・・・。あかねちゃんで間違いないか?」 「!!? 黄瀬あかね・・・4歳で、今日モールのイベントで・・・」 その時、携帯から同時にゆるキャラショー開始のお知らせが流れたのが聞こえた。 「もしかして、翼もモールに??!」 「そう。 今、一緒にイベントスペースの所に居るから。」 「わかった!」 黄瀬はセンターへ向かっていた途中だったらしく、ショーを見て待つことに。 携帯を切ると、二人が心配そうに見ていたので、簡単に説明をしながらインベントスペースに用意されていた椅子に座った。 「これから、あかねちゃんのお兄ちゃんこっちに来るって。」 「りょーくん??」 「そうだよ。りょーくんとお兄ちゃんは友達なんだ。」 「そーなの??? すごーい!!」 あかねちゃんは嬉しそうな顔して、すごーいの連呼をしていたが、ゆるキャラの登場で気持ちはそっちへ集中した。 しかし、そんな事もあるんだなぁ・・・。あかねちゃんの楽しそうな顔を眺めながら、黄瀬の姿を思い出していた。確かに、黄瀬と目元とか似てるかも・・・? イベントが終わって、後ろの方から声を掛けらた。 振り向くと、そこには普段ジャージ姿の黄瀬がカジュアルな格好でいた。 ・・・なるほど。確かに、間違えるかもな・・・。 今日の恰好は、色違いのペアルックと言える位、シャツの色意外同じだった。ジャージかユニフォーム姿の黄瀬を見慣れてる所為で、似た格好なのに少し恰好良いのが癪に障るけど・・・。 「翼! あかねが世話になった!」 「りょーくん!」 あかねちゃんが、黄瀬めがけて飛びつく。その目にはうっすらろ涙が浮かんでいた。やっぱり、不安だったんだな。 今度は、控え目にシャツの裾が摘ままれた

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