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その2
「おにぃ、この人は??」
「え・・・、ああ。黄瀬リョウって言って、入学式に最初に声かけてきた奴」
「!ちょっ!! 翼、その紹介はなんだよ!」
オレと咲紀との会話が聞こえたのか、あかねちゃんを抱っこしながら会話に黄瀬が割り込んできた。
「初めまして。今日は妹がお世話になりました。オレは、黄瀬リョウって言います。翼とは、クラスが違うけど入学時から仲良くさせて貰ってます。」
おお!!入学式の時、オレに話しかけて来た時と同じ人懐っこい笑顔+丁寧な口調で咲紀に黄瀬が挨拶をした。咲紀が一瞬、言葉に詰まった。やっぱり………、咲紀も女の子なんだなぁ・・・。こうしてみると、黄瀬もやっぱりイケメンだし。
うんうん
「わ、私は、佐々木咲紀です。兄がいつもお世話になってます・・・。」
「って、咲紀!! オレはお世話になってないぞ!」
「そう? おにぃってば、どこか抜けてるからさ・・・」
「あはは!! 咲紀ちゃんの方がしっかりさんだね。
けど・・・今日は、助かったよ。 二人ともありがとう。」
「りょーくんごめんなさい。 つーくん、さきちゃん、ありがとう」
抱き抱えられてた、あかねちゃんが申し訳なさそうな顔してこちらを見ていた。その頭を撫でながら、諭す黄瀬がちゃんとお兄ちゃんで思わず感心してしまった。
「何?つーくん、そんなに見つめられると穴開いちゃうんだけど?」
ニヤ
「!!」
こ、こいつ・・・。今、ちょっと感心してたのに・・・また、茶化しやがって・・・。
「ばーか! まぁ・・・今度ははぐれない様にね。 それじゃ、あかねちゃん、リョウもまた!!」
あかねちゃんの頭を撫でて、二人とは別れた。
モール内の本屋に移動する途中、咲紀に黄瀬との事を聞かれた。
「さっきの人とは、おにぃ・・・」
「ん? 黄瀬??あー・・・リョウとは友達だよ。」
思わず言い直した。
入学式以来、あの三人を名前呼びしているが、朝比奈と黄瀬の名前を呼ぶのはなんだか慣れない・・・。相馬の事は、すんなり呼べたんだけどなぁ・・・。なんでだろう?? 意識してる訳では無いんだけどなぁ・・・。
そんな翼の様子から、咲紀は何か納得した顔をしていた。
「あ、おにぃ! ここは別行動だからね!!」
そう言うと、咲紀は一目散にお目当てのコーナーへと消えていった。
ここの本屋は、品揃えが良いらしく咲紀のお決まりのコース。なんの本を買っているのか一度聞いた事があったが、咲紀は教えてくれなかった。その頃から、本屋では別行動。一度、後ろからついて回ったら、物凄い勢いで怒られたので、それ以来はちゃんと別行動で待つ事に・・・
まぁ、今日はテーピングの本良いの有ったら欲しいかも・・・。
医療系のコーナーへ行くと、見覚えのある顔を見つけた。
「・・・ハル??」
「あれー?? 翼くん、どーしたの?」
「テーピングの本でも・・・って・・・」
朝比奈の手元を見ると、何冊か雑誌や本を持っていた。
「それなら、こっちのコーナーの・・・。これ、テーピングの巻き方とか解り易く載ってるし、筋肉の事とかも載ってるから使いやすいよ。」
勧められた中から自分でも見やすいと思ったものを一冊選んで買う事にした。
「やっぱ、運動部なだけ有って、ハルも詳しいな・・・。それも、似たようなやつ?」
朝比奈の手元にある雑誌や本には、人の体のイラストや写真が表紙に使われていた。ただ、日本語では無かったので、何の本かは詳しく解らなかったが、居た場所的にも似たようなモノだとは思った。
手元の本を指差しながら、聞いたら珍しく視線を逸らされてしまった。
「まぁ・・・僕のは勉強の為にかなぁ・・・。」
「・・・そっか・・・。」
少し気まずい空気になってしまった所に、咲紀が自分の買い物を終えて探しにきた。そして、本日二度目の展開
「・・・おにぃ、こちらの方は??」
「ああ・・・。」
「・・・お、おにぃ??」
朝比奈と咲紀が顔を見合合せてこちらを見る。
あ、これも二度目。
ってか、朝比奈。こんな仕草も違和感無く可愛いって・・・凄いな。
「咲紀、こいつもクラスは違うけど、高校の同級生。朝比奈ハル。」
「はじめまして。 妹の咲紀です。」
「初めまして。 咲紀ちゃん。 僕は、朝比奈ハルって言います」
しゃらら~ん キラキラ
って、なんかバックに見える!! 効果音が聞こえる?!
こ、これがエンジェルスマイルなのか!?
きっとこのスマイルは有料だな。そういえば、朝比奈のこんな余所行きな笑顔とか見た事無かったかも?ある意味珍しいモノを見たかも。あ、カメラ!!
持ってくれば良かった・・・。さっき、黄瀬に会った時も、あいつにしてはかなり珍し服装だったのに、今日は勿体ない事をした。
「・・・翼君? 咲紀ちゃん待ってるから、会計してこようよ??」
「あ! ああ。」
「どうせ、カメラ持ってきたら良かったとか考えてたんでしょ?」
レジに向かう時に、耳打ちされて思わずびっくりした。
オレ、そんなに顔に出てたか??
「ホント、翼君は隠し事できないよね~。 今度、仕事用の顔も撮らせてあげるよ。」
なんか、腑に落ちない事も言われた様だけど・・・。仕事モードの朝比奈を撮らせて貰えるのはラッキーかな。
朝比奈とは本屋を出て分かれた。
そして本日またまた二度目のこの流れ。
「・・・おにぃ、さっきの人は・・・」
「ああ、朝日奈・・・ハルとは友達だよ。」
・・・・また思わず、言い直してしまった。
まぁ、咲紀は気にして無さそうだし、どっちでもいいか。
どうせなら、このまま相馬にも会わないかぁ・・・。
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