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朝比奈のターン
昔から僕の外見だけで勝手な想像で近づいて来る人は多かった。
けど、それも仕方ない事。
父親の会社のイメージモデルとしてカタログに出たのが、僕の最初の仕事。
それがきっかけで、CMにも出る様になった。
それまで、父は仕事ばっかりで母は寂しそうにしてたのが、僕の出たCMが評判になりテレビに出る様になる頃には、母は芸能事務所を立ち上げていた。
父の会社のイメージモデルをメインにやっていたから、僕がスポーツする事には反対されなかったけど・・・
はぁはぁ・・・
「ああ、ハルくん・・・。きみのこの足を触らせてもらえるなんて・・・。」
はぁはぁ・・・
スリスリ
キッモッ
ホント、こんな奴ら多すぎ!!
これが、芸能界の闇か・・・。
そんな頃、父の会社の付き合いのパーティーで何度か見かける様になった男の子がいた。
その子が、僕から見てもカッコ良くて・・・それでいて・・・
ホント、生き方下手
あんな、つまらなそうな顔
勿体ない・・・・
その男の子が、青桐相馬と知ったのは3回目のパーティー
それは、その子の誕生会。
「・・・そんなんで疲れない?」
「・・・別に。」
一瞬眉間にシワを寄せたかと思ったが、すぐ他所行きの顔になった。
そこから・・・数年。幼馴染としてお互いが認識しする様になった頃に・・・まさか相馬がこんな顔をする様になるとは思わなかったな・・・。
激辛のたこ焼きで、悶絶してる相馬とかレアすぎる・・・。
それに・・・
自分の隣に居る男の顔を盗み見る。
その男が見ている先にいるのは・・・。
彼が、僕の周りに居る様な男だったら良かったのに。
相馬との勝負なんて勝ち目がある訳ないのに。
でも、勝ち目の無い戦いに負けた所を慰める位は僕がやっても良いよね?
だから、早く僕の所まで落ちて来ないかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝比奈ハルに対しての第一印象は、胡散臭い顔をしてる子供だった。
テレビをつけて見ない日は無かった。
同い年ということで、親に連れられてよくパーティーに来ていたのは知っていたが、初めて声をかけられたのは誕生日パーティーの時だった。
それから、パーティーで会うと会話をする様にもなった。
中等部に上がる時に、学園で再会した頃には、まるでアライグマの様なやつだと思った。
あの顔に騙されて、うかつに近寄るとあの牙に食いちぎられる。
姫だの何だの言われて、あいつが喜んだ事なんて無かった。
走ってる時のあいつは、生き生きしていたけど・・・それも・・・
だから、あいつが陸上以外であんな顔をするなら、あいつの気が済む様にしたら良い。
まぁ・・・少し気に入らない事もあるけど・・・。
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