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プロローグ
あの味がずっと忘れられなかった。
あの味。思い出しちゃいけない。
思い出さずにはいられない。
ふいに口にした時広がった甘美な甘さ。
と、同時に背徳感。
子供ながらに思った。
あぁ、これは知っちゃいけなかった。
こないだ知った言葉『禁断の果実』好きなテレビ番組の歌に出てきたこの言葉。
これがきっとそうなんだ。
他の人のならきっとこんな風には思わなかったし、甘くもなかったんだ。
こいつのだから。双子の弟のだからこんなに甘いんだ。
治療と称して離せなかった。
ダメだ、これ以上はダメだ。
浮遊感に頭がおかしくなる。
この事は心に閉まっておかなければならない。
忘れよう。それが一番いい。
こんな一瞬の出来事忘れられる。
楽しい事は毎日あるじゃないか。
そうだよ、忘れられる。
「ほら、もう止まった」
目の前の同じ顔はすっかり泣き止んでいた。
パンドラの箱には鍵をかけられたつもりでいたんだ。
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