2 / 60

第2話 双子のこと

「一卵性双生児なの?見分けがつくわね、珍しい。」 幼い頃からよく言われた言葉。 僕達は都心からは少し離れた小さな海沿いの町に双子として産まれた。都心へのアクセスも便利な割に、人口が少なく穏やかな町。海からの風が吹くと潮風を感じられる。町の人達はみな海が好きだった。  夏祭りは毎年浜辺で行われ、小規模ながら花火大会も開催されていた。その時ばかりは都心から人が多く押し寄せたりもする。そんな町。  都会の人々が喧騒を忘れ田舎を楽しむにはもってこいの距離。会社帰りの団体さまも来たりするそんなよくありそうな町。  僕と双子の兄が産まれたのは、そんな町だった。  双子の兄、晴空(はると)。弟の僕が贔屓目で言うわけじゃなく明るくて、誰とでもすぐ仲良くなれる人気者。笑いの中心には大抵晴空がいた。  1学年1クラスしかない学校で、晴空の事を知らない者はいなかった。短い髪に健康的に日焼けした褐色の肌。よく笑う口元。  対して僕は目が少し隠れるくらいの前髪に合わせた長めの髪。人と目を合わすのが苦手だから、この前髪が役にたってくれている。生まれつき病弱であまり外では遊ばなかったから、気を使ってるわけでもないのに美白の凪とは隣に並びたくないと、女子が集合写真の時に隣に並ぶのを嫌がる程に白い。  帝王切開で同じ母親からほぼ同時に産まれたのにおかしなもんだ。 「お兄ちゃんが健康で元気な部分全部持って生まれちゃったのね。晴空、あなたは元気な分弟の凪を守ってあげてね」 小さい頃から耳にタコが出来るほどに聞いてきた母の言葉。小さい時はなんとも思わなかったこの言葉が、成長し自我を持つ程に呪いのような言葉に聞こえていた。

ともだちにシェアしよう!