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第7話 発熱

 制服をびしょ濡れのまま洗濯機の上に置いといて、帰ってきた母親に叱られたと同時に心配された。僕が熱ばかり出してた子供だったから母親は未だに過保護に小さい子ども扱いをする。 「傘はさしてたんだけど、たまたまトラックが水溜まりを通った時横を歩いててさ、水かぶっちゃった。あっ、帰ってきてすぐシャワーで温まったから大丈夫だと思うんだ」 いつもより饒舌な僕。 「温まったの?その割に青白い顔してるわね。お母さん明日休めないのよね。心配だわ」 「そんな、もう小さい子供じゃないんだから大丈夫だよ」 「そう?」 「ちゃんと部屋でも温かくしてるから」  小さな子供扱いが煩わしく、会話を切り上げて自室に戻る。中学入学を機に晴空と別々になった自室。  すごく、距離が出来てしまった気がする。部活も別だから登下校も別、部屋も別。あれだけ一緒にいた僕たちが急に離れなきゃならなかったからこんなに寂しいんだ。別に僕はおかしくない。たまにお兄ちゃんていう存在を独占したいだけ。少し精神的に子供なままの部分が残ってるんだ。中1なんてきっとまだそんなもんだろう。  詰め襟の制服はまだぶかぶかで着せられてる感満載だし、こないだまでランドセルしょってた小学生が制服を着たからって急に大人になるわけないじゃないか。  夕飯後、案の定身体がぞくぞくしてきた。 部活から帰って一緒に食卓についていた晴空が、「凪の顔色が悪い」って言ってる。ボーっとしてきた僕はその声を聞いてるものの反応できなくて、お母さんが「制服びしょ濡れで帰ってきたのよ」なんてしかめ面で説明してるのを上の空で聞こえてはいる。 「熱測ってみよう」 晴空がボーっとしてる僕の脇に体温計を差し込んでくれて…38,2℃。 「ほらぁ、やっぱり熱出たじゃない。明日は学校お休みの連絡するから凪は温かくして寝なさい。夜中様子見に行って熱あがってそうだったら解熱剤もっていくから」 少しふらふらしながら階段を上って、二階の自室へ。夜のうちに熱出たって事は、明日を待たずして晴空は隣にいてくれるんじゃないか。さっきまでボーっとしてた頭は冴えてきて、眠気もなく、期待で胸がどくどくしてくる。  いつの間にか眠っていたようだった。目を開けても真っ暗。家族の誰かが電気を消してくれたんだ。おでこには冷えピタが貼ってある。子供の頃よく冷やされた太ももにはないみたいだ。熱くなってる太ももに冷たい感触がする瞬間が嫌いだった。そこを冷やした方がいいと聞いて頭で理解してからも、あのヒヤッとする嫌な感触。水分をとりに行こうか。汗をかいた下着を取り替えに下に行こうか。ダルい身体をむりやり起こしてベッドのスプリングが動く。

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