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第25話 探す晴空

 日にちを少し戻して凪の実家。  朝起きた晴空が凪を探していた。自分のジョギングコース、登下校する道、昔遊んだ公園、どこを探しても凪はいない。父は車を出し凪の行動範囲と思われる所を走り、母も自転車で探した。  凪には友達がいないのは晴空がよく知っていたから同級生に電話をするという行為はしなかった。否、同級生が凪の居場所を知っているわけはなく、皆心の中では分かっていた。凪は貴嶺と本家に行ってしまった事を。認めたくなくて疲れきるまで探した。父は車で探し、そのまま仕事へ行くと連絡がきた。晴空が帰ると母が待っていた。 「ただいま……母さん、凪はあの従兄弟に連れてかれたのかな…。きっとそうだよな、自分から行くわけないよな?!」 「晴空…。凪は私たちの生活を守るのに自分から行ったんだと思う」 「なんでだよ!俺が守るって言ったし守ってきたじゃん!ずっとこれからも一緒に大きくなってくんじゃん!」 なんでだよ…と言いながら疲れた足は立っていられなくなってしまった。母も泣いたんだろう顔で近づいてきて靴を脱がせてくれた。 「なぁ母さん、俺も行くからその本家って場所教えてくれよ」 「それは無理よ」 「なんで!」 「本家に行って一緒に住むなんて事になったら、晴空は嫌な目に合うわ」 「どんな嫌な目だよ?!凪と離れる以上に嫌な事なんてない!」 「いいえ。凪と離れる以上に辛いかもしれない事よ。凪は力を持ってるからそんな目には合わない、はず…」 「ハッキリ教えてくれよ!母さんたち何を隠してるんだよ?本家ってなんなんだよ!」 「ごめんね晴空。子どもにはあまり良くない話だから詳しくは言えない。ただ、あそこは狂った家なのよ…。もう一度言うけど、凪は力を持ってるから、本家に行ったなら凪の身は無事のはずよ。私の双子の妹がいるの。きっと力になってくれてるはず」 「母さんも双子だとか初めて聞いたし。母さんと父さん隠し事しすぎだよ…。俺はそこまで小さい子どもじゃないのに!何が嫌で家を出てきて、何を隠してるんだよ……」  子どもじゃないって口では言ったけど、まだ何も出来ない子どもなんだと思ってた。  俺がもっと大人で凪を守れるくらい強ければ凪は出ていかなくて済んだんだ。  凪。凪は何を考えながら出ていったんだろう。  昨日俺の傷の手当てをしながら出ていくことを決めたんだろうか。あんな傷。凪の為についたあんな傷なんて大したことないのに。凪がしてくれたおまじないを思い出す。痛いのとんでけと傷を丹念に舐めてた凪。ちらりちらりと見えた赤い舌と舌の感触。確かにあの時股間が熱かった。気づかれたのかもしれないと思った。双子の弟でそんな風になる俺。  もしかして、そんな俺が嫌で凪は家を出たの?凪…家を出る前に相談してほしかったよ…。

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