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第46話 お帰り?

 その時だった。 (お前何やってんだよ!確か貴峰だったな!お前そのつもりで凪連れてったのかよ!返せよ俺の弟…俺の凪だかんな!)  死んだはずの晴空の声が聴こえた。  凪を寝室に運ぼうと抱えた時に、気配に気がついた。もちろん凪も気がついたみたいだ。人間以外のなにか。  さっきまでは低級な霊がふわふわしてるなくらいのどうでもいい存在だったはずなのに、急にデカくなった。 「凪…」   「…分かってる」 (……お前確か貴峰だったよな?!いっつも凪にそういう事してんの?最初から凪をそういうつもりで連れに来たのかよ?で、凪も凪で何でされるがままなの?えっ、二人はそんな関係なの?はっ?おい待てよ頭整理つかないし、つか、おい!!俺なんで透けてんだよ?!?!) 「…晴空!!!」  何だよ折角手に入りそうだったのに、やっぱり晴空がいたら霊だろうとそっちに行くのかよ。お姫様抱っこから飛び降りるなんていう姫らしくない凪は霊体の晴空に飛び付いた。  力があっても霊に抱きつけるわけがなくて、すり抜けるのなんて分かってただろうに。何度も何度も晴空の方へ向かって手を伸ばしていた。 「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 凪がその場に膝をついて大声で泣き出した。お前晴空の葬式の日から泣けないでいたのに、やっとこの状況で泣けたのな。    この部屋に来てからも、俺が見てる限り泣かなかったし、泣いたように目が腫れてることもなかったよな。やっと実感したのか?お前のお兄ちゃんの体はもうないんだよ。  お前の手をひいてくれたんだろう手もないんだよ。だからさぁ、忘れろよ。  晴空、お前からもそう言えよ。弟の事想うんだったらさ、考えてやるんだったらそう言えよ。 (なぁ、なんで凪はこんな大声あげて泣いてるんだよ。しかもなんで俺の体透けてるし、足が地面についてないし、なぁ、貴峰さん?分かるんだったら説明してくれよ)  これは…凪に言ってくれよって考えるより、もしかしてこいつ、自分が死んだ、自殺したこと忘れてんのか?おい待てよ、今から手を出そうと、童貞喪失させてもらえそうだった相手は大泣きしてるし、自殺したやつは覚えてないみたいでこの場を混乱させてくれるし、俺1人でこの状況どうしろっつうんだよ。  混乱してるのはこっちも同じで、意志をもってたはずの股間のモノはみるみるやる気を失っていった。 「おい!晴空!お前自分が自殺した事覚えてねーんだな?めんどくせぇ。俺の体貸してやるから凪と話せ!泣き止ませろ!」  

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