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第47話 二回目のキスだね
「泣き止ませろ!」と言いその場に座ったかと思ったら貴峰さんは横に倒れた。
と、自分が勝手に貴峰さんの体に引き寄せられるのを感じた。
「……あっ、あはっ、あはははは違う体だ…」
「晴空?」
「なぁ凪、貴峰って何者なの?普通こういう時って呪文とか唱えるもんなんじゃないの?」
「…力を持ってる…なんか、予測がつかないことする人?」
「ふぅぅぅん。ただいま。ってのは違うんだろうけど、ただいま。凪、久しぶり」
涙が引っ込んだ凪はくりくり潤んだ目でこちらを見つめていた。髪も伸びて、大人っぽくなったな。綺麗だ。同じ顔のはずだけど。
「晴空!!!」
抱きつかれて後ろに倒れ、キスされた。こんな積極的な凪は初めてだ。何度も重ねるだけのキス。
「えへっ、二回目だね」
「二回目?小さい時してたのはこっちの、頬っぺたの方だぞ?」
幼い頃よりすっきりしてる頬をむにむに掴む。俺に会えて何されても嬉しいのが伝わるほど、凪はずっとニコニコしてる。
「違うよ。僕が家を出る時に、寝てる晴空の口にキスして行ったんだ」
いたずらしたんだみたいな言い方で凪も唇をむにむに触ってくる。なんだよ、両想いだったって事だよな?なんだよ、なんだよ、離れてた時間損した気分になり、また凪の頭を引き寄せキスをする。なんだよ、これ俺の体じゃないのに。俺の自分の体でキスしたかったよ凪。
「いいの?」
場所を寝室のベッドに移した。いいのと訊いたら頷く凪。もっと沢山話したい事、離れてた間の話があるはずなのに、僕たちは体を重ね合わせることを選んだ。
これが話せる最後の機会かもしれないから。貴峰さんの体から抜けたら、俺が成仏してしまうかもしれないからと、凪から「晴空、抱いて」と言い出してきた。
こちらは中身が俺だけど、外見が貴峰。あっちは正真正銘そのままの凪。貴峰が抱いてることになるんじゃないかと逡巡してる俺を、凪が一喝した。
「中身は晴空なんだから。僕がずっとずっと心の支えにしてた晴空なんだから、これでお別れの可能性もあるんだから抱いてよ。覚えておかせてよ…」
覚えていてくれるのが良いこととも思えないけれど、そこは俺のエゴで覚えていてほしかった。
さっきリビングで沢山した口をつけるだけのキスを、今度は深く繰り返す。唇の中を探ってお互い今までの事が分かるんじゃないかってくらい念入りに念入りに、お互いの唾液が混ざってどちらのものか分からなくなるほどに繰り返す。
会えなかった分気持ちが盛り上がり、昂るものも早い。
「さっきまで、弄ってたからすぐ挿るから…晴空、来て?」
なんて?耳を疑った。なんで凪がお尻の穴を弄って自慰をするようになったかは分からなかったし、もしかしたら貴峰のものになっているのかもしれない、それより俺が童貞だから上手く出来るのかも分からない。
「またゴチャゴチャ考えてるでしょ。らしくないよ、晴空。年とったせい?」
「そう、だよな。俺らしくなかったな」
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