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第17話
ヒロの部屋に戻ると、机に教科書や参考書、ノートを広げ、熱心に勉強中だ。
学校には通わず、部屋で独自に勉強し、テストの時だけ登校していたらしい。
「あまり根を詰めすぎないようにね」
お茶を手にした俺にようやく気がついたようだ。
お茶を受け取ると、ありがとう、と笑顔を見せた。
中退はしたが、一応、大学までいった俺もたまにヒロの勉強を見てあげた。
「母さんとすっかり仲良くなったみたいだね、凄く喜んでるよ。ずっと専業主婦で暇を持て余していたみたいだから」
「でも料理教室していたなんて凄いね」
「母さんの趣味だよ。それに寂しさを解消する為だったのかも」
「そっか...」
「おいで、瑞希」
手招きされ近づくと後ろから抱き締められた。
「めっちゃ好き。瑞希」
「私も」
「今度、デートしよっか」
女装したまま外を歩いたことはまだない。
黙っていると、
「どうしたの?瑞希」
「大丈夫かな...」
「なにが?」
「変な目で見られちゃうかも、ヒロ」
「変な目、て?」
抱き締めたまま、優しくヒロが尋ねてくる。
「...女装した変態と歩いてる、てヒロが後ろ指差されるの、嫌だ」
すぐにヒロは後ろから頬に可愛らしいキスをくれた。
「そんな事ないよ。瑞希は凄く可愛いし。違和感もなんもない。もし、瑞希や俺たちを後ろ指差したら、そいつを俺はぶん殴る」
強い口調。頼もしいけれど、不安に駆られた。
「やめてよ、暴力はよくない」
ヒロの手を握る。
「ヒロが殴りそうになったら私、力ずくで止める」
「瑞希...」
俺を正面に向かい合わせると俺の手を握る。
見つめ合った。
「愛してる、瑞希」
「...私も」
口付けを交わした。深いけれど、優しいキス。
俺はヒロに溺れてしまいそう....。
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