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第49話
全てを知った俺はビールを飲んで、ぶすくれて、ヒロの部屋で男に戻りました。
ウィッグの長い髪、スカートを履いたまま、ビール片手にベッドの上で胡座かいてます。
「怒らないでよ、瑞希」
そんな俺をいつものように後ろから抱きしめたまま、俺の顔を覗き込むヒロがいます。
「怒るに決まってんだろ。騙されてたんだから俺」
「騙したつもりじゃないよ、瑞希ならわかってくれると思って」
ギュッと後ろから抱きすくめられ、頬がくっついてきます。
「俺が好きなんじゃないの」
「好きだよ、好きに決まってる」
「だったら、なんで俺をお前の親父の性処理にするわけ」
ヒロがしばらく無言になりました。
「母さんのためもあるけど、もう嫌なんだ、俺」
「なにが」
「父さんとセックスすんの」
俺は缶ビールを口に当てたまま、しばらく無言でした。
「お前の代わりに性処理しろ、てことかよ」
「そういうつもりじゃ...父さんとのセックス、瑞希もまさか嫌い...?」
俺は言葉を詰まらせました。
正直、元々、ヤリマンなゲイな俺なんです....。
「嫌ならいいよ。ごめんね、瑞希」
切なそうなヒロの声は演技じゃなさそうに感じました。
「もう大丈夫だから。これからも俺が父さんに抱かれるから安心して、瑞希」
俺は少し考えました。
ヒロはノンケで、たまたま、ゲイの俺を好きになっただけ。
父親に抱かれたくはないヒロの気持ちもわかるっちゃわかるので悩みました。
「それで俺と付き合った訳じゃないよね?自分の身代わりとして宛てがう為じゃないよね?」
俺はヒロを見ないまま、確認しました。
「そんな訳...本当に瑞希の事が好きだから。好きだったから。だから、付き合いたい、て思ったんだよ。嘘じゃない」
「...その言葉、信じていいの?」
ヒロが無言で頷いたのがわかりました。
確認する為に振り返り、ヒロを見ると、涙ぐんでいて、焦りました。
「な、泣くことないだろ」
「だって...瑞希に嫌われた...」
俺はふと、ヒロにプレゼントされ、ヒロが付けてくれた首元のハートのネックレスに触れました。
「...嫌った訳じゃないよ、疑心暗鬼になっただけ」
「...ほんとに瑞希が好きだよ。一緒にいたいから、この家の一員になって欲しかったんだ。ずっと一緒にいたいから」
泣きながら言われ、俺はビールを置き、ヒロの頭を撫でました。
「...俺の彼女でいてくれる?瑞希」
「...うん」
涙目のまま、ヒロが笑顔を見せました。
「近々、またデートしようね、瑞希」
「...お前の試験が終わったらな」
俺はその日、決めました。
ヒロの彼女であり続けること。
そして、お父さんの性処理という名の愛人になることを。
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