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第55話
「ヒロにはお小遣いあげているのに、悠人には無いのは不公平だと思うの」
しばらく、お父さんはだんまり。そして、はあ、と深いため息を零しました。
「ヒロはいいが、悠人に小遣いをやってもろくな使い方をしない」
「ゲームも悠人の趣味だもん。ゲイビも売れてはいなくて、お金に困ってるみたいだし」
俺は続けた。
「もしかしたら、悠人がゲームオタクになったのは、お父さんとお母さんの仮面夫婦に気づいていて、現実逃避する為なんじゃないか、てふと思ったの。悠人も気づいていないだろうけど」
お父さんが俺の目を見たまま、微動だにしません。
「...私達にきづいて、現実逃避の為にゲーム....」
「もしかしたら、なんだけど。潜在意識っていうのかな、悠人も悠人で本当は悩んでいて、紛らわす為にゲームして、現実から目を背けてるんじゃないかなあ」
お父さんの目が俺の目を見据えます。
「....そうか。そういうことか」
「悠人がダメなんじゃない。ダメになったのはお父さんとお母さんの責任でもあるよ。
悠人はやたら何でもかんでも話してお喋りなのは、本当は寂しいだけなんじゃないかなあ?」
お父さんは起き上がり、神妙な面持ちで顎を摩ります。
そんなお父さんを俺は寝転び、肩肘をついて頭を抑えた見た目は女、中身は男の姿で見守りました。
それから、ヒロだけではなく、悠人はお小遣いを貰えるようになりました。
喜ぶ悠人を見て、俺は秘かに微笑みました。
もちろん、俺が仲介に立った、なんて野暮なことを悠人には知られたくはない。
これでも俺は一応、男なんで。
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