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一日目の終わり(2)

「服の脱ぎ方が、わからない……だと?」  寝室に放り込まれ「寝ろ」と言われたフランは、ほかの誰に言えばいいのかわからず、恥を忍んでステファンを追いかけ、「服が脱げない」と打ち明けた。  初めて着せられた立派な服は複雑な造りをしていて、すごい速さでベッテに着せられてしまったフランには、何がどうなっているのか、さっぱりわからなかったのだ。  ため息を吐いたステファンがボタンやリボンを、一つずつ外してくれる。 「なんで、俺がおまえの世話を焼いているんだ……」 「ご、ごめんなさい」  泣きそうになってうつむくと、金色の髪をポンと軽く叩かれる。 「できないことがあるのは、おまえのせいではない。知らないことは、覚えればいい」  叱らないのですかと顔を上げたフランに「悪いことをしたわけではないのに、叱る必要はないだろう」とステファンは静かに言った。それから少し笑った。 「一つずつ、できるようになればいい」 「はい」  頷きながら、また胸がいっぱいになる。  頑張ろう、と思ったのに、いざベッドに入ろうとすると、驚くほど柔らかい布団や毛布やシーツが何枚も重ねてあって、自分がどこに挟まればいいのかわからなかった。 「す、ステファン……」 「今度はなんだ」  シーツを捲ってフランをベッドに入れながら、ステファンがぼそりと漏らす。 「……俺は、おまえの親か」 「ごめんなさい」 「謝るな」  静かに言って、ステファンが髪を撫でた。 「謝らなくていい」  何も言えずに見上げていると「おやすみ」と額にキスが落ちてくる。 「お、おやすみ、なさい……」  頬がかあっと熱くなる。泣きたいくらい幸せな気持ちで目を閉じながら、心の中で祈った。 (神様……。僕を、ステファンのにしてくれて、ありがとうございます。きっと、いいになりますから、これからもどうかお守りりください……)

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