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一日目の終わり(1)

 食堂には三人分の席が用意されていた。フランが見たこともないような立派な食べ物が何皿も並んでいる。 「さあ、座って」  レンナルトの言葉にフランは驚いた。 「僕は、どこか別のところで……」 「何言ってるの。三人しかいないんだから、一緒に食べようよ」 「でも……、こんな……」  嫌いなものがあるのかと聞かれて首を振った。どれも見たことも食べたこともないものばかりだ。正直にそう言うと、今まではどんなものを食べていたのだと聞かれた。 「朝は、お粥で、夜はパンとスープです」  パンはここにあるような白いパンではなく、硬くて薄くて黒っぽいものが一切れ。スープは塩の味がする湯に野菜の切れ端が少し浮いたものだった。  ステファンとレンナルトは揃って眉間に皺を寄せた。 「それは、普通のことなのか。子どもにろくなものを食べさせないことが……」  フランは頷いた。フランに限らず使用人の食事は似たり寄ったりだ。一番下っ端でろくに役に立たないフランの食事はさらに減らされることがあるが、ベッテも親方もヤーコプも、同じものを食べていたはずだと答えた。  レンナルトが椅子を引き、ステファンがフランの手を引いてそこに座らせる。 「食べろ。これは、命令だ」  しかし、食器の使い方がよくわからない。フランは、二人に手伝ってもらってスープと魚料理を口に運んだ。  スープはフランが知っているものとは全然違う味がした。  魚料理も、今までに数回だけ食べたことのある魚とは似ても似つかないものだった。口の中に甘みや旨味が広がり、生臭い匂いが少しもしなかった。  けれどすぐにお腹がいっぱいになってしまい、苦しくて目に涙が滲んできた。  レンナルトがため息を吐いた。 「急には、食べられないね」  二人は黙って食事を始め、フランも黙ってそれを見ていた。 「明日からは、もう少し軽いものにしてやれ」  ステファンが言い、レンナルトが「そうする」と言って頷いた。  食事の最後に白くて柔らかそうなものが出てきた。 「デザートなら、入るんじゃない?」  食べてみろと言われて、小さなスプーンをおそるおそる口に運んだ。フランは驚いて目を丸くした。  ひんやりして甘いものが口の中ですうっと溶けてゆく。  すぐに二口目のスプーンを口に入れる。今度は目を閉じて、ひんやりとした甘さをうっとりと味わった。 「気に入ったらしいな」 「アイスクリームだよ」  ステファンとレンナルトが笑って見ていた。つい夢中になってしまった自分が恥ずかしくなってうつむく。 「少しは食べて、もっと大きくなれ」 「腕に縒りをかけて、美味しいものを作るからね」  二人に声をかけられ顔を上げた。「とけないうちに食え」とステファンに言われて、残りのアイスクリームを、ついつい緩む頬を隠し切れないまま、最後のひと口まで味わった。

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