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逢瀬(4)

 身体の中心で熱を持ったもの同士が触れ合う。あ、と短い声が零れ、引きかけた腰を強く掴まれて引き戻される。フランのものよりはるかに大きな熱塊に押し付けられて、頭の中でチカチカと火花のようなものが弾けた。 「あ、ステファン……」 「うん?」 「こんな……、あ……っ」  抱き合ったまま軽く腰を揺らされて、小さな悲鳴のような短い喘ぎを零す。定期的にもぞもぞする場所がひどく敏感になっていて、ステファンの熱と擦れ合っただけで達してしまいそうだった。 「や。も……、でちゃう……」 「出せばいい」  いや、と首を振った。終わってしまったら、ステファンはきっと城に帰ってしまう。 「まだ、いや……。もっと……」  一緒にいてほしい。もっと、そばにいてほしい。 「もっと、して……。お願い……」 「おまえ……っ、どこでそんな……」  ぎゅっと、身体が軋むほど強く抱きしめられて、苦しくて痛いのに嬉しかった。ステファンの首に腕を回して引き寄せると、噛みつくように唇を奪われる。舌が絡み合う。耳を噛まれ、小さな鼻の頭にも歯を立てられて、なんだか食べられているような気持ちになった。  ああ、だから『食べる』っていうのかな。そんなことを頭の隅でぼんやり考えた。  ヒートの時のように何もわからなくなってしまうのでもなく、かといって、ただの『処理』とも違っていて、ステファンのどこか荒々しい仕草に胸がドキドキと高鳴る。首筋を吸われ、鎖骨に舌を這わされて、身体中の血がざわざわと騒いだ。  小さな胸の飾りを噛まれてかすかな声が上がる。 「あ……」  舌の先で転がすように舐められ、下肢に溜まった熱が弾けそうになった。 「あ、だめ……」 「何が、だめなんだ」  ぷっくりと膨らんだ赤い突起にステファンの息がかかった。フランの身体がふるりと震える。ん、と口を引き結んで首を振ると、反対側の飾りに歯を立てられて「あん」と甘い声を上げてしまった。  ステファンが笑い、またぞくぞくとした震えが全身を駆け抜ける。もう一方の飾りを指でこね回され、たまらない気持ちになった。 「あ、ステファン……、だめ……」  いや、と首を振ると、「さっきから何を我慢してるんだ」と笑われる。気持ちがいいなら、いつものように吐き出してしまえばいいだろうと。 「や……。だって……」 「うん? だって、なんだ?」 「お、終わったら……」  終わってしまったら、ステファンは城に帰ってしまう。とぎれとぎれの声で理由を告げれば、困ったような、それでいてどこか喜んでいるような顔で見下ろされ、胸がきゅっと痛んだ。 「おまえは、ほんとに……」  ばかだなと囁かれて、大きな手で頭を抱き寄せられた。 「今夜は夜伽だからな。朝までこうしてそばにいる」 「ほんとに……」 「おまえが思っている以上に、俺も我慢しているのだとわかれ……」  このまま連れて帰れないことが、ステファンも辛いのだと教える。  顔を見れば気が済むと思ったのに、会えばもっとフランを近くに置きたくなる。フランの思いが伝われば、なおさら置いていくのが辛くなる。一夜の逢瀬でさらに離れがたくなったとしても、もう言葉だけでは足りない。 「夜が明けるまでだ」  そう告げると、ステファンは再びフランの身体に唇を這わせ始めた。

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