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プロローグ(酒を飲んだ翌朝のお約束)
酒に酔うと、隠れた本音が出るとか聞いたことがありませんか?
「……どーしよ」
シーツの下は全裸だった。すぐ隣では昨日騎士に昇進したばかりの友人が寝ている。
騎士団の寮は基本個室で、一つ一つの部屋は決して広くはないががたいがでかい奴が多いからベッドはでかくて。だから、そんなにがたいがでかくない俺と童顔の友人が寝ても大丈夫なぐらいの広さはあって……。
いや、そうじゃなくて。
……やっぱ覚えてんのかな? 昨夜のこととか忘れててくれると助かるのだが。
ここが同僚に与えられた個室なら逃げ帰ればいいんだけど、残念ながらここは俺の部屋で。
「……カイエ……起きてたの……?」
寝ぼけたような声がして、俺はびくっとした。
「あ、ああ……」
うろたえながらも返事をしたら、なんと友人が俺の上にのしかかってきた。
「リックッ!?」
「なー……しよーよ。僕の童貞、もらって?」
「ばっ、ばか言ってんじゃなーいっ!」
ばちこーん! とけっこう勢いよく平手で張ったのに、同僚―リックはその細く見える身体とは裏腹に倒れなかった。
「あ……」
リックの頬が真っ赤になったのを見て、俺は蒼褪めた。そんなに力を入れてしまったのかと。
でもリックは全然気にした様子もなくて。
「……カイエも今日は休みだろ? なー、頼むよ。僕絶対にカイエのこと気持ちよくさせるからっ! 昨夜もあんなに……」
「う、うるさいっ! 出ていけーっ!」
さすがに蹴ったらベッドから落ちたから、そのまま本気で部屋の外へ蹴り出した。バタン! とドアを閉めて急いで鍵をかける。リックはどんどんとドアを叩いた。
「カイエ~! せめてパンツ~!」
「うるさい! とっとと部屋に帰れ!」
ここでドアを開けたら本当に押し倒されそうで怖い。昨夜のあれやこれやを思い出して顔が熱くなる。
「あれー? リックじゃん、追い出されてやんのー!」
「フられたのかー? がんばれよー!」
同僚たちのからかうような声が聞こえてきて、俺は頭を抱えた。あー、もうなんかされたのがバレバレじゃないか。明日は盛大にからかわれる予感しかしない。いや、もう今日の飯の時間からか。
せっかくなれた騎士だけど、もう辞めたいなんて思ってしまった。
「……なんで俺が抱かれるって話になるワケ?」
どう見たって抱かれる側なのはリックの方なのに。リックは俺の頭半分ぐらい背も低いし、俺より細いし、それに童顔だし。なのに俺を抱きたがるってなんなんだろう。
「ヘンなヤツ……」
でも「抱きたい」なんて言われたのは初めてだったから、ちょっと照れた。
俺はいつも「抱いて」って言われる方だったから。
※アルファポリスからの修正転載です。完結済なのでできるだけ早く全話上げていきます。よろしくー。
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