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第4話

仕事の仕方や、選ぶものの基準。 よくよく見れば気がつくことができる。 時々、違和感を感じさせる、そこここに残っている前の人の影響。 それだけ君は心を傾けて誰かと向き合っていたんだろう。 でもね。 社食での騒動から気をつけて君を見ていて、僕はそんな君が、好ましいと思った。 僕にも、そんな風に向き合ってくれないかなって、思った。 僕も、君からそんな風に影響を受けたいと思った。 だから。 僕は君が好きなんだと思う。 思いを自覚したところで、僕たちの関係は何も変わらない。 時々通勤が一緒になって、時々社食で一緒に昼飯をとって、時々終業後に飲みに行く。 時々の頻度が、以前より少し増えたかな、というのがせいぜい違うところ。 会社の同期としては普通の距離。 だって何も踏み出していないから。 淡々と時間は流れて、暦の上では春になる。 そこここに気配が忍んでいるのはわかるけど、まだまだ寒くて防寒具が手放せない。 そんな時期に、『これから期末です気を引き締めて目標を達成しましょう』なんて、会社であった訓示。 ありがたくない美味しい料理と、味がよくわからなくなる酒の席。 完全に別の部署なのに、たまたま会場は営業と同じところで、僕は社内での菊地の評価を改めて知る。 そろそろグルーブ一つ任せてもいいかな。 そんな風に上から評価されて下から頼られて、女性からは別格扱いされている、よくできた男。 まあ、東さんが絡みたくなるのもわかるよなって、僕は思う。 人間性を疑われるから、実際絡むかどうかはさておくけどね。 職場の飲み会なんて、福利厚生で会費が出てお付き合いでいいお店が予約されてて、うまく立ち回ればそれなりに楽しいはずなのだけど、今夜はなんだかうまくいかない。 君が気になって。 「佐倉、飲んでるか?」 「食べてます」 「まあ、飲めよ。お前はもう少し柔らかくなっていいぞ」 僕が上司につかまっている向こうで、君は女性陣に囲まれて、困ったように笑っていた。

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