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第3話

◆ 身支度を整えて、ホテルの備え付けのコーヒーを口にする。 いつもは『次にいつ会えますか?』とあまり聞くことはない。 最初のうちの数度聞いたことがあるけれど、その度困った様な顔をされてしまった。 だから、それから尋ねることができなくなってしまった。 恋人なのにな、と思う。 でも、きっと航平さんにとっておれはセフレの延長線上にいるのだろう。 そんなことを聞いて、遊びの人間にそこまでしていられるかと言われるのじゃないかと、正直怖かった。 だけど、去年は明らかにセフレだったけれど、今年は一応恋人なのだ。 おずおずと開いたつもりの口は何度かハクハクと戦慄いてしまった。 「再来週の日曜日なんだけど、航平さん空いてますか?」 おれが尋ねると、考えることも、確認することもなく、直ぐに航平さんは答えた。 「その日は駄目だ。」 「……そうですか。」 「なにかあったか?」 「いえ、そうじゃないんです。」 精一杯浮かべた笑顔は、多分普通に笑えていたと思う。 「また、連絡する。」 「はい、楽しみにしてますね。」 その日は、再来週の日曜日はおれの誕生日だった。 出会って1年だ、おれの誕生日も航平さんの誕生日も一度は来てしまったのだろう。 それでも、一緒に過ごしてみたかったのだ。 初めての我儘は叶えられることなく、今年も誕生日は一人で過ごすことになりそうだった。 きっと、大人の人は誕生日等、気にしないのだろう。 自分との違いを思い知らされるようで、一人の帰路、ただただ泣かないことに必死になっていた。

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