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第2話
◆
おれの体がセックスになれた頃、航平さんに「付き合わないか?」とベッドの中で聞かれた。
それは、コンビニでジュースでも買おうかという位の気軽さで、最初は何を言われているのか分からなかった。
行為のあとの整わない呼吸で「つ、付き合いたいです。」とだけ返した。
その時満足気に航平さんは笑ったけれど、そこまで付き合ってに深い意味はなく、所謂ピロートークだったのだと思う。
事実、あの時言えなかった好きですは今も言えていないし、航平さんから好きだと言われたこともない。
相変わらず、会うのは数週間に一回夜に食事をして、その後ホテルに向かう。
きっとあの時の言葉はピロートークの一種だったのか、単に他の男とされるのが面倒だったのか、そんなことなのかもしれない。
おれはまだ、子供だ。だからきっといつか捨てられるんだろう。
だけど、確かにあの時付き合ってくれと言われたのだから、おれは航平さんの恋人だと思いたかった。
遊びなのかもしれない。そもそも、恋人面なんてされたくないのかもしれない。
だから「おれのことすきなんですか?」なんて聞けない。
ただ、おれの中でだけ航平さんのことをたった一人の恋人として、勝手にそう思っていればいいのだ。
メールは迷惑にならない程度に、数日に一回たわいもない物を送ってみる。
月に数回、とても短い返信が返ってきた。
航平さんのことは、今も何一つ知らない。
最近少しだけ表情が疲れている様に見えるから、仕事が忙しいのかもしれない。
おれに分かるのは、その程度だ。
跪いて、航平さんのベルトをはずして、スラックスのファスナーを下ろした。
中から取り出したものは浅黒くて、まだ萎えている。
ちゅう、と吸い付くと少ししょっぱい。
そのまま、舌を這わせると、少しだけ硬度をまして、嬉しくなる。
唾液をまぶす様に舐めて、それから咥える。
亀頭部分がツルリとしていて舌を這わせるのが気持ちいい。
むぐむぐと舐めていると、髪の毛を撫でられる。
ほめられているみたいで嬉しい。
大きくなった、航平さんのものを口の奥に入れる。
苦しくて生理的な涙が出るけど、それよりも航平さんに気持ちよくなってほしかった。
じんわりとにじみ出る先走りはしょっぱくて少しだけ苦かった。
「もう、いいよ。」
余裕のない顔で、航平さんが言った。
もう少し舐めていたい。できれば、飲ませてほしかったけど、そっと引き剥がされて諦める。
少しだけ、乱暴になった航平さんにベッドに押し倒されてそのまま繋がる。
セックスを初めてしてから1年近く経つ。
なれた体はもう、快感しか拾わない。
――ずぬ、ずぷぷぷ
挿入時に恥ずかしい音がしてしまうのも、勝手に体が快感に変換してしまう。
めちゃくちゃにしてほしかった。
航平さんのこと以外何も考えられないくらい。
不安な気持ちにならないくらいめちゃくちゃにしてほしかった。
思いっきり、しがみついてキスをねだると、航平さんの舌がおれの口内をくまなく犯す。
今だけは、恋人として、おれのことだけ考えていて欲しかった。
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