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「弥生 サン、俺のこと好きでしょ」
「…………」
真矢 の言葉に弥生は答えない。
「手も繋いでくれたし、一緒にいたいって言ったのは?さっきのシガーキス、だって。」
「…っ…全部冗談だよ」
火をくれと頼んだ真矢に、弥生はライターを渡さずシガーキスを提案した。あの伏せた瞼は、震えた指は、冗談などではないと、真矢は確信していた。
それでも目をそらされると、胸の奥が切なさで握りつぶされそうになる。
「ずるいよ。」
「狡いんだよ、大人は。」
全部冗談だと言うくせに、弥生の表情は強ばり、突き放すことの躊躇が微かに感じられる。
ともあれもう二度と来ないであろうチャンスに真矢は振り切る他なかった。
「じゃあ、ずるい大人には、罰があってもいいよね。」
真矢は弥生の煙草を取り上げてもみ消す。
「あっ、」
抗議の声をキスで塞ぐ。腰を抱き寄せて、右手は弥生の投げ出された手の指へ滑るように絡ませる。
舌で唇を割って入ると、弥生は言葉に反して舌を少し出して応えた。
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