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第1話
「いらっしゃいませー!」
自動ドアが開くと同時に店内のスタッフが一斉に気合いを込めた挨拶をする。
自動ドアからは近所の私立の高校の制服を着た、黒髪のおとなしそうな小柄な男子高校生が突っ立ったままだ。
ぼうっと立ち尽くしている彼に受付の女性スタッフが近づいている。
俺は担当していた女性のセットも終わり、女性に鏡を見せた。
「いかがですか?」
「うん!いい感じ!いつもありがとうございます、健さん」
常連の女性が柔らかく微笑む。
耳元で、入ってきた男子高校生の担当を任された。
「こちらにどうぞー!」
ソファにぼんやり座る彼に声を掛け、案内した。
鏡の前の椅子を引いてやり、彼は座るなり、
「髪を切ってください」
囁くような小さな声だ。
「髪を?」
特に切る必要も無さそうな揃えられた艶やかな髪。
「髪を切ってください」
少年がさっきよりも少し声を高くした。
それでもだいぶん小声だ。
「髪を?えっと、どんな風に?見るところ、最近、切ったばかりなんじゃないかな?パーマを当てる訳にもいかないし」
「丸坊主でも構いません」
俺はギョッとして鏡越しに彼を見た。
俯き、涙目だ。
「ど、どうしたの?大丈夫?」
最後まで言うまでに彼は店内に響くかのように大泣きし出した。
わーん!
それはもうさっきまでのおとなしそうな彼とは裏腹の。
スタッフだけじゃない、客の視線が俺たちに集中する。
これじゃ、俺が泣かせている、と思われかねない.....。
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