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第2話
「な、泣き止んでくれないかな」
慌てて鏡越しの彼に言う。
泣き止む気配はなく、周りの視線が痛い。
ふと、俺は閃き、店長に声を掛けた。
「あいつ、俺の弟なんです...うち、かなり複雑な家庭なもんだから、家で色々あったみたいで....」
神妙な顔で大嘘をついた。
俺の家庭事情なんぞ知らない店長が、
「...そうなの?可哀想に...今日はもう上がっていいから、弟さんの傍にいてあげて」
店長もまた神妙な顔つきで、俺はようやく、男子高校生を泣かせている美容師、では無くなった。
「ちょっといいかな。俺、もう上がりだから話しを聞くよ」
鏡の前で俯き、まだ1人で泣いている少年に優しめに声を掛けた。
外に連れ出してもまだ泣いているので、俺の家に連れていく事にした。
同じく別の美容院に勤める、彼氏、祐介はまだ勤務中だし、同棲はしていない。
普段は電車を利用するが、泣いている制服姿の高校生と歩くと目立って仕方ないので、彼を連れてタクシーに乗り込んだ。
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