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第3話

自宅のマンションに入り、 「テキトーに座って」 と立ち尽くす彼を促し、俺はキッチンに立ち、お茶でも煎れよう、と思っていた。 「好きにしてください!」 リビングでいきなり、少年は着ていたブレザーを脱いだ。 「は?」 呆気に取られていると、 「僕を抱いてください!」 彼はネクタイを外し、白いワイシャツのボタンを外し始めた。 「ちょ、ちょっと待って、何やってんの」 慌てて彼に近づくと、彼は涙目で、 「男だから駄目ですか?好きにしてください!めちゃくちゃにしちゃってください、僕のこと!」 必死な形相な訴えにボタンを外そうとする手に触れ、制止した。 「何があったか知らないけど、自暴自棄になってんの?」 急に彼は無言になった。 「俺が本当にヤバいやつなら、お前をめちゃくちゃにしてるよ、見た目も可愛らしいし。でも、タイプじゃない」 そう彼の目を見て言うなり、また彼は泣き出した。 「話しを聞く、て言ったろ?それ以上の事をするとは言っていない」 ビシ、と俺が締めくくると彼も理解したのか、うろたえてはいるがまた無言になった。 「...僕、失恋したんです」 彼がぽつり、呟いた。

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