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第5話 幸せな日常

************* その日から、俺は律くんとよく一緒にいるようになった。 最初に比べると律くんは随分クラスの人とも打ち解けてたけど、 ずっと俺と仲良くしてくれて、いつも隣にいることに申し訳ない気持ちになりつつも、 嬉しかった。 初めは、クラスの女子たちから、 俺ばっかりが律くんと一緒にいててずるい と 言われることが多かったけど、いつからか、 みんな、なんか 俺たちが仲良くしているところを見る方が好き? みたいで、 何も言われなくなった キーンコーンカーンコーン 「ナナ、お昼食べよ」 「食べよー、……ってそれッ、購買でなかなか買えない生クリームパンじゃん…!」 「……これ欲しいの?」 「ぅッ…、ほ、欲しいけど…、律くんの分なくなっちゃうし……」 「いーよ、俺そんなに生クリーム好きじゃないしあげる」 「ぁ、ありがとッ……!今度お返しするッ…!     ァムッ…………うまッ!!」 「フフッ、おいしい?」 そう言われて、思いきり頷く ッ本当に、おいしい……! 律くん、優しすぎる……;; 「?そーいえば、なんで生クリーム好きじゃないのに買ったの?」 「ぁー……なんか購買のおばさんがおまけでくれた。」 「なっ…!? それ、絶対律くんがかっこいいからじゃん! いいなー……」 「そう? 俺は断然ナナのお弁当の方が良いけど…  あっ、そうだ ナナさっきお返しくれるって言ったじゃん?」 「?うん」 「俺、ナナのお弁当欲しい」 「え!そんなのならいくらでもあげるけど…!」 「あと、食べさせて」 「うん、……ッて、え!? な、なんで!?」 「だって、さっき俺食べさせてあげたじゃん」 その言葉を聞いて、さっきの自分の行動を思い返す (……た、確かにそうだったし…、なんなら自分からいってるけど……  ッその時は無意識だったし……! いや、でも無意識だとしても、  高校生にもなってそんなことしてるのはやばいだろ、俺……!) 「ほら、早く フェアじゃないし 、ナナ」 そう言って、口を開ける律くんは前みたいに悪戯っぽく笑っている (……ふぇ、フェアじゃないのか、な……?  ぅ……、でも、律くんスタンバイしてるし……  せっかく貰ったんだから、しないとだめだよな……) そう思ってスプーンにオムライスをよそい、口に近づける 「……はい、……律くん」 この時の顔は、誰が見ても分かるほど赤かったと思う 「ン、 美味しい」 律くんがそう言って笑うと、教室のあちらこちらで聞こえる女子の奇声 声はかなり大きかったはずだけど、恥ずかしさのあまり ちゃんと耳に届かなかった (律くんは澄まし顔で食べているけど……) それでも、頭の片隅で律くんの人気ってやっぱ凄いなとおもっていると、 ふと、 「やー、やっぱ2人のカプやばいわ……!   食べさせっことか…… そりゃ、女子も沸くって……」 という女子の声が聞こえてくる 何を言っているのか理解はあまりできなかったけど、  俺たちが食べさせあっていたのをクラスの人たちに見られた と知って さらに顔が熱くなる 「も、もうこんなことしない……!恥ずかしすぎる…」 「ぇー…、俺は嬉しかったけど?  もう生クリームパン食べれなくなるけど、いいの?」 「ぅ…、それは……、、 …律くんずるい……」 俺が食べたいの知ってて…… 、と思って顔を見ても 律くんは一向に譲る気配を見せなくて 結局、律くんの案で これからお昼ご飯は人が少ない場所で食べる ということにした まぁ、人が少ない所なら…… 生クリーム好きだし…… とか思っていると コツンと足に何かが当たった気がした 下を見てみると消しゴムが落ちていた 誰のだろうと思って拾うと 「日向瀬、それ俺の」 と言う声 「あ、竹内くんのだったんだ。 はい」 「ん、サンキュー」 突然、律くんに無表情のまま、手を掴まれる 「消毒するから、ちょっと下向いてて」 透き通っていながらも低い声に、少し体が震えるのを感じた 「…?う、うん」 なんで急にそんなことを言うのかは分からないけど、とりあえず言うことに従う (消毒って…?  俺何かしちゃったかな…… どうしよう…) 律くんは綺麗なだけに無表情になると、少し冷たく感じてしまって いつもあまり感情を外に出さないから、余計に掴みづらくなってしまう 俺も、あまり人と接するのが得意じゃなくて、 律くんが高校で初めてできた友だちみたいなものだから、 普段とは雰囲気が少し違う律くんを見て、良くない考えが次々浮かんできた ちょっとしてから、 「もう大丈夫」 と言う律くんの声が聞こえた 「…どうしたの?」 と聞いてもはぐらかされてしまって、 やっぱり俺が何かやらかして怒っているのかな、とか 消毒ってどういう意味なんだろ、 とか色々不安になって顔を見ても、分からないままで、 「もしかして…、俺、」  何かやらかしちゃった…?  そう聞こうとしたけど、 先に 「何もないから、ナナは気にしなくていーよ」 と、微笑みながら言い放たれてしまい、結局聞けずじまいだった 律くんは、たまにこうやって俺に何か隠すようなことをするから、 それが少し悲しくて、でも普段はいつも俺と仲良くしてくれて、とても毎日が楽しかった だから、俺と律くんの仲が深まるのはあっという間だった

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