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竜騎士団の始まり~第20話 卒院パーティー※~
それから何度も空に飛んだ。大魔導士は馬鹿というが慣れれば可愛く思えた。
私が縛らなくても魔石の支配である程度大丈夫なことがわかった。
兵舎にいる騎士たちとも仲良くなり、まあ、王族と騎士の距離はあったが、入団した時は上手くやっていけるのではないかと思われた。
親しくなったとはいっても、ドナートをワンクッションに置いてだけれども。
ワイバーンの卵はすぐに私は青、ドナートは赤に染まり、孵ったワイバーンは黒い鱗が光の加減で、私のほうが青く、ドナートの方は赤く見えた。
二週間ほど面倒を見ていたら、馬くらいは言うことを聞くようになった。私の方はプルシュ、ドナートはルドと名付けた。慣れると可愛い。
離れるときはぎゃあぎゃあ泣いて宥めるのが大変だった。再会する時はもしかしたら覚えていないだろうが、元気でいてくれるといいなと思った。
そして新学年が始まる頃、私たちは王宮の自室に戻ることなく、寮へと戻った。大魔導士からは定期的に魔石が送られてきて、私とドナートに魔力を籠めろとのお達しが来た。
魔力の訓練になるので重宝はしているが、竜騎士団が軌道に乗っても、このペースで魔力を込める作業があるのだろうかと、少し不安に陥った。
今年は卒業の年でもあり、進路が決まる年だ。卒院式は成人した貴族の子供の社交界へのデビューの場となっている。卒院式を終えた後、夜に夜会が開かれ白い正装姿でダンスを踊る。婚約者がいれば婚約者、そうでないものは血縁者やあるいは恋人と。
私はどうしようか。
側仕えと言えども幼馴染で公爵家の第3子。パートナーにするのは問題ない。しかし大抵はメイルとフィメルの組み合わせで、メイルとメイルで、パートナーとする習慣はない。
「クエン。」
どうしよう。
「クエン……」
やっぱりハディーに頼むべきか。
「クエンティン!」
「あ、な、なんだ? ドナート。」
はっとして顔をあげると盛大にため息を吐かれた。
「紅茶が冷める。ほら、お茶菓子もあるぞ。そんなに根を詰めないで少し休め。まあ、勉強より、考え事をしていたようだが。」
顔を近づけて覗き込まれる。ドナートの綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。
「あ、え、えええ、と。」
思わず視線を逸らして、用意してくれた紅茶に手を伸ばそうとすると、その手を掴まれた。
「何を、考えていたんです?」
あ、丁寧な言葉遣いになった。まずい。
「い、いや? たいしたことはないけ、ど……んっ……ッ……」
キスされて言葉の先がドナートの口の中に消える。ドナートの魔力を感じてぞくりと震えた。
ドナートの魔力が気持ちよくて、熱が上がる。
舌が入ってきて、反射的にその舌に自分の舌を絡ませた。唾液が混じり合う。
「……んんっ……」
一旦、唇が離れて角度が変わる。息継ぎに吐き出された息が熱くて、ますます背筋が震えた。
ごくりとつばを飲み込む音も、熱を煽る。
ドナートに思う存分、口内を弄ばれてやっと解放された。
「……はあ……はあ……」
「相変わらず息継ぎが下手ですね。クエンティン様。」
「ち、違う。絶対、違う。」
きっと睨むと、ドナートは不敵に笑う。だめだ、これは意地悪モードに入っている。気が済まないうちは解放してくれないパターンだ。
「違わないですよ。さ、言ってごらんなさい。何を考えてました?」
「う……。」
「言い換えましょうか? 誰のこと、考えていたんです?」
お前のことだ、と言いたい。
でも言えなくて、睨むだけになってしまう。
何も言わない私に、ドナートはふっと笑って私を抱き上げた。
「わ、お、おいっあぶな、いっ……」
座っている椅子からいきなり抱き上げるから、書斎の勉強机の椅子が倒れた。
がたん、と音がする。
「もう、結界は発動してますから、多少の物音は、問題ないですよ。」
「ドナート……」
私は諦めた。何も言わない私をさっさと、寝室に運んでいく。途中で、浄化をかけられた。
ベッドに落とされると服を脱がされて、お互い裸になる。
キスで、反応していた昂りが晒されて、思わず目を逸らした。そこをすかさずぐっと両膝を押さえて足を開かれた。
じっと視線を股間に留められて、羞恥に目元が染まった。後孔まで丸見えで、すべてを晒しているという事実に、じわじわと熱が上がって、股間のモノが頭をもたげていく。
「私は何もしていないのに興奮していますね。何を想像したんですか?」
普段はすぐに触れてくるのに、視線を昂ぶりに固定したまま何もしない。
「キ、キスのせいだ。あんなキス、するから……」
「クエンティン様は誰とキスしても、こうなってしまうと?」
「なっ……そ、そんなの、ドナートとしか、するわけないじゃないかっ」
「私だけ? では、先ほどは何を考えて、私の呼びかけに気付かなかったんですか?」
ぴくぴくと昂ぶりが震える。恥ずかしさに足を閉じようとしたらさらに開かされてしまった。
「あ……」
目尻に涙が滲む。
「いいです。何も言わなくて。体に聞きます。」
「え……」
ぱくりと咥えられた。すぐに先端に舌を這わされて、敏感な鈴口に刺激が加わる。
「……あんっ……」
巧みな口淫にすぐにイキそうになるが、根元を握られて堰き止められる。
「あ、ドナート……」
「さて、クエンティン様。何を考えていたんですか?」
「ドナート……」
ぽろりと、涙が零れた。イきたくてイけないせいか、それとも、こんな風にドナートに責められるせいか。
「馬鹿、お前のことに決まってるだろうッ……」
ビクリ、と根元を堰き止めている手が震えた。
「卒院の、……ダンスパーティーで、お前に、パートナーをしてもらいたいけど、無理、だなって思ってっ……でも、他にしてもらいたい人なんて、いない、からっ……悩んで、たんじゃ、ないかっ……」
馬鹿馬鹿と何度も言ったのに、ドナートはそれはそれは嬉しそうな顔をして微笑んだ。
「俺は、もともとパートナーを務めるつもりで根回ししてたから、気にしてなかった。クエン、悪かった。」
ちゅっと唇に蕩けそうな笑顔でキスするドナートに私は自分が空回ってたのを知った。
「馬鹿ッいい加減離していかせろッ」
悪い、と悪びれもせず、ドナートはぱくりと咥えて私をイかせた。
それから3回は素股をして、私はベッドにぐったりと横たわった。後ろからドナートに抱きかかえられた。
「ドナートの馬鹿。知らない。」
「クエン、機嫌直して。」
「紅茶、飲みたかったのに。お菓子も。」
「明日の朝、もっと美味しいの、淹れるから。」
「約束だぞ。」
「はい。クエンティン様。」
「そういうの、慇懃無礼って言うんだぞ。」
「はい?」
結局、ドナートは私のパートナーを務めることになり、私がフィメルの立場で立ち回った。
ダンスはドナートと二回踊って、具合が悪いから、と退場した。
こういう時は病弱と思われているのもいい。
兄たちも、王と一緒に王族の公務として来ていたが、挨拶をしただけで終わった。
卒院後は、2ヶ月後の9月から、私とドナートは竜騎士団に入団する。団長と副団長として。
竜騎士団は私たちの入団をもって、正式に騎士団として発足するのだ。
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