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第1-1話一足早い目覚め
◆ ◆ ◆
いつも目覚めは俺のほうが早い。
どれだけ夜遅くに寝たとしても、体がいつも同じ時間に起きるクセがついている。
それに早く起床すれば、真太郎の寝顔を拝むことができる。
俺の隣で未だ深い眠りについている真太郎。
この家に連れて来て間もなくの時よりも、眉間が緩んで穏やかな寝顔だ。
完全に俺へ身も心も委ねてくれている――それが確かに分かって、俺は朝から顔が緩んでしまう。
起こさぬよう、そっと真太郎の頬へキスを落としてから俺は部屋を出て朝食の支度を始める。
朝は凝ったものにはしない。
料理を作るのが面倒な訳ではない。俺としてはあれこれと仕込みたいところだ。
しかし真太郎の体や性格を考えると、朝は軽めのほうが好まれる。
その分、昼や夜に俺が真太郎に食べてもらいたいものを、全力で振る舞う。
朝の献立を考えながら、今の自分に思わず笑ってしまう。
真太郎との生活が始まる前は、こんな人間ではなかった。
もっと俺は雑な人間だったはず。
あくまで気が向いた時だけ料理を作り、日常の食事にはあまりこだわらなかった。
切るのが面倒でトマトやきゅうりは丸かじり。
忙しい時は栄養バーで済ませ、味や舌の満足度は二の次だった。
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