35 / 111

第8-1話確実に堕とすために

 逃がしてなんかやるものか。  俺は体を倒して肌を密着させると、真太郎の首へ腕を回し、体が離れないように捕らえる。  獣のように激しく腰を振る必要はない。深々と繋がった所を揺さ振り、耳やうなじに歯を立て、吐息をかけていけば――。 「え、詠士……っ、ぁっ、ぅぅ……ッ……はぁ……っ、ア――」  奥を揺らすほどに真太郎の声が甘くなる。俺の腕の中で行為に溺れていく気配に、胸の高揚が増すばかりだ。  真太郎と高め合う熱で体が燃え盛り、今にも二人まとめて蒸発しそうな気になる。  それでも構わない。二度と離れられないようになるなら本望だ。  こうして快感を刻み込んでいくのは、真太郎を取り返しのつかない体にしたいから。  真太郎のことだから、他の奴に気持ちが移ることはない。その確信はある。  むしろこれからの人生を俺に支えてもらわないと生活できないという申し訳なさで、静かに身を引こうとする可能性のほうが高い。  そんなこと、思わせてたまるか。  どこまでも俺からの快感を覚えて、快楽に強欲になって、俺を選び続けるしかない体になってしまえばいい。  もちろん体だけで済ませる気はない。心もすべて俺がもらう。  力の入らない指でシーツを掻く真太郎を堕としながら、俺は耳元で囁く。

ともだちにシェアしよう!