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第7-1話何もかもが特別
「本当に……待ちくたびれたよ、詠士。待ち過ぎて別人になった気分だ」
詠士が動くよりも先に、私はそちらへ身を寄せて体をくっつける。そしてキスを見舞う。
すぐにでも激しく交わりたいと体が望んでいるのに、ゆっくりと味わうように私は唇を押し付ける。詠士もそれに応えて、寝る前の穏やかな口付けを私に与えてくる。
舌を絡めず、唇の柔らかさを確かめるように押したり引いたりを繰り返し、時折、上唇だけを唇で挟んだり、下唇を口に含んだり。丁寧に互いを感じ取っていく。
体が焦っている反面、ここまできてすぐに貪ってしまうことがもったいない。
言わずとも詠士も私と同じ気分なのだろう。私を急かすような直接的なやり方はしない。どこまでも遅く、体の末端から少しずつ私を追い詰める。
指を絡め合い、唇以外にも顔のあちこちへキスと唇だけの甘噛みを施され、私も真似して詠士に返す。少しこそばしそうに、でも嬉しそうに笑みを溢され、たったそれだけの反応に胸が高鳴って止まらない。
「確かに今日の真太郎は別人だな……いや、これが素の真太郎なんだろうな」
優しく詠士が私の頭を撫でる。ぞくぞくと甘い疼きが背筋から腰へと走り抜け、快感に私の顔が歪む。ちょっとした感触にも、言葉にも、自分の反応がまったく隠せない。
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