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第24話

慰安旅行の最終日。 ようやく、明日からいつも通り、僕達、親子は日常に戻れる、と僕はホッとしています。 せっかくだから、と父は旅館の懐石料理を頼んでくれました。 父が宴会でいないのは寂しいけれど、豪華な食事はとても美味しい。 お腹いっぱいになり、父が部屋に来てくれるのを待ちました。 深夜すぎても父が来る気配はなく、LINEの既読も付きません。 「酔っ払って寝ちゃったか...」 あまりお酒の強くない父ですから致し方ない。 朝には父たちはマイクロバスで、僕は父の手配してくれた列車とで帰路に向かいます。 慰安旅行が終わり、自宅に戻ったら、またたっぷりイチャイチャしよう、そうしよう、そうして僕は1人、眠りにつきました。 僕と父が対面したのは夕方でした。 「一緒に露天風呂に入れたし、なかなか楽しかったね、お父さん」 自宅で僕は父に微笑みかけました。 ペアのビッグサイズのトレーナーに互いに着替えながら、 父は、そうだな...、とだけ答え、背中を向けて着替えています。 違和感を覚えました。 「どうしたの?お父さん。なにかあった?」 もしかしたら、会社の人と揉めたのかもしれない、と僕は思ったのです。 「奏斗...」 「うん?」 「...怒らない、て約束してくれるか....?」 「怒る、てなにを?」 僕はきょとんとなり、そして笑いました。 なにを怒るというのだろう。 僕の考えは浅はかでした。 「....同僚と寝た....」 唖然となりました。 同期でもあり仲の良い同僚と2人で飲み直ししているうち、互いに酔い、父は同僚とキスをし、しまいにはフェラをしてしまった。 最終的にアナルまで使ったと聞き、僕は怒りが込み上げてきました。 だから、昨夜、部屋にも来ず、LINEの既読すらなかったはずだ...。 「...許せない」 僕は切ない表情の父を見上げ、睨みつけました。

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