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第1話 出逢い

小学生の雪斗には楽しみがある。町を散策し、誰も知らない場所を探す事。何より何かを『探す事』が好きだった。そんなある日、まだ行った事のない林に辿り着いた。一度も来た事がないのにも関わらず、何故か懐かしいような呼ばれているような不思議な感覚を覚え躊躇う事なく林の中に入って行った。 『…スゲー、秘密基地でも作れそうだ。』 純粋に楽しむように林の奥へと入って行く。すると、林の丁度真ん中くらいの場所に大きな桜の木を見付けた。 『桜?こんな時期に?』 今はもう5月も下旬。狂い咲きにしては中途半端、かと言って桜の季節でもない。そんな事を思いながら雪斗は桜の木に近付いた。 『客人とは珍しいですね。坊やは迷い込んだのですか?』 『えっ!?あー吃驚した…妖怪か幽霊でも出たのかと思った』 声を掛けてきたのは長い黒髪を後で縛っては肩に掛け束を前にして、美しく女性の様な風貌に白い肌が僅かに見える着物姿の青年だった。青年はにこやかに柔らかい声音で雪斗に語り掛けた。 『何故そう思ったのですか?』 『だってさ、こんな時期に桜は咲いてるし、そこからいきなり声を掛けられると誰でも驚くよ。ねえ、お兄さんはここで何をしているの?』 『私は…』 『やっぱりストップ!!俺が当てる!!えーと、花見?』 『違います。』 『散歩?』 『違います。』 『…迷ったの?』 『ぷっ…この歳格好で迷ったとは随分情けない話になりますね。』 『だよな〜あ!俺、東宮雪斗。小学四年生だよ。お兄さんは?』 『私…ですか?…桜と言います。歳は秘密にしておきましょう。ただ、20は越えていますよ。ですから、迷子となると情けないでしょ?』 『はは!確かに!!えっと…桜って名前だから桜の所に居たの?』 『私は長い間ずっと此処に居ます。離れられないんですよ。』 『離れられないっておかしな話だね。でも、いいや!一緒に遊ぼ!な?』 『ふふ…構いませんよ。私も暇をしていたので…』 雪斗と桜は仲良くなるには時間が掛からなかった。出逢ってその日から雪斗は桜を気に入り、桜も雪斗が特別だった。それからは小学校が終わると雪斗は足早に林に行き桜の所で遊ぶようになっていた。

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