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俺は死んだ 1

『ばーか。こんなんで俺が死ねるかよ』  そう言ってシニカルに笑うお前の顔は、ムカつくくらい清々しくて、ムカつくくらい格好よかった。  死ねるかよって、そう言っていたのに。俺を小馬鹿にして、見下して、いってぇデコピンをかましたくせに。  なんだよ、それ。  お前、次の日すぐに死んじゃったんじゃん。  明日でいいよって、俺ん家から持ってきた映画のブルーレイも山積みの書類の下敷きにしてさぁ。その明日がなかったくせに。  まだ十八歳だったのに。  人間って、そんな簡単に死んじゃうのかよ。  ちっぽけ。腫れた瞼からとめどなく流れる涙をそのままに、呆然と立ち尽くしながらそう思った。  通夜や葬式は、あっけないもんだった。友人や知人も少なかったからか、参列者も焼香をあげる人間もほんの僅かだった。  俺も死んだらこうなんのかな。せいぜいお前より長く生きて、たくさん家族を作って、惜しまれながら看取られる人生を歩んでやるよ。何も言わないあいつの墓前に、そう誓った。  月日は淡々と流れていき、俺も大人への階段を上っていった。なのにスピードはガキの頃と違ってジェットコースター。あっという間に三十路のおっさんになろうとしていた。  気づいた時には、会社と家を往復するだけの虚しい毎日。趣味も恋人もなーんもない、つまらない人生。  そしてある日。  俺は死んだ。

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