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俺は死んだ 2

 あっけねえ。死んでみて改めて思ったわ。なんだよ、このクソ人生。  だってまだまだこれからだぞ? 今は晩婚の時代なんだから、三十路を迎えてからが人生の本番だろ? 社会的地位を築いて、金を貯めて、保険に入って、家も建てて……あ、その前に嫁さんを貰わなきゃだけど。結局のところ、それらができんのって今からだろ? 二十歳そこそこで結婚して、子供作って一家の大黒柱ってのは、いったいいつの話よ? 男として生まれたってのに、何一つとしてやり切れてねえよ。  だいたいなんで死んだんだよ。病気? 過労死? ストレス? SAN値が振り切っていたこと以外は全く心当たりがねえんだけど!  いったい何が原因で死んだんですかー!?  心の中でどれだけ叫んでも、答えなんか返ってくるわけがない。そりゃそうか。実家にある仏壇にさえろくに手を合わせないような無神論者だったし、翼の生えた優しい誰かがお迎えに来てくれるなんて期待もしてねえよ。先進した島国に生まれたがゆえのテンプレートな社畜だったから、きっと頭のどこかがプッツンいっちまったんだろう。親に勧められた人間ドッグでも受けときゃ、何かが違ったんかな。  感覚がない。思考? 思念? こうして何かを考えることがかろうじてできるくらいで以前あった四肢は動かせない。真っ暗で、何もなくて、誰もいない。  俺、本当に死んじまったのか。なんだかなぁ。もうちょい意味のある人生、送るつもりだったんだけど……死んじまったら、本当に何もできねえんだな。  ずっと昔に死んだあいつ、どんな気持ちだったんだろ? 考えたって、仕方ねえけど。  あ〜あ。なんかもう、どうだっていいや。  青春は一瞬で、夢は抱く前に砕け散るような人生だった。後悔はあったけれど、死んでから何かを望むほどのものじゃない。  さあ、俺をどこへでも連れていけ。煮るなり焼くなり好きにしろ。  まあ、死んだ先が何もないってんなら、願ったり叶ったりだけど…… 「んじゃ、好きにさせてもらおうか」  ……へ?

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