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ペットじゃねえよ 6

 けれど、その魔王が主だからって俺は鞭で叩かれるわけでも、飯を抜かされるわけでもない。そういった痛い暴力の支配は今のところ一切ない。  一切ない、が……むしろそっちの方が何倍も、何倍もマシだった。マジで。  豚たちに捕まったあの頃、この身体の中で鳴った警報は幻聴でも何でもなかった。  どこに競り落とされようが、俺の人生は終わっていたに違いない。でもこいつ以上に最悪な主はいなかったんじゃないだろうか。  こいつは一向に起きない俺の耳元に唇を近づけると、一層低い声で囁いた。 「エイシ。まだ寝ているのか?」  ああ、くそっ……息を吹きかけんな。シーツ越しでも伝わるんだよ。耳が羽根箒で擽られるようにむず痒い。  一瞬だけ、俺の身体が小さく跳ねた。そんなつもりはなかったのに。  俺を見下ろしていたこいつは、「フッ」と短く、そして意地悪そうに笑った。 「寝てるなら、好都合だな」  わざとらしい物言い。俺が反抗していることも、わかってるくせに。こいつは俺を、まだ「寝ている」と捉えたんだ。「寝ている」と捉えたくせに……  そうして、いつもの「遊び」が始まった。 「うひゃうっ!?」  どっから出たのか、俺の口から甲高い悲鳴が上がった。何が起きたのか、理解をするよりも先に上がったそれを抑えようと、シーツから両手を離し、慌てて口元を押さえた。

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