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甘い蜜 己の罪 7
「えーし。えさ、できた」
「うわっ!?」
「魔王」といい、ゴブリン といい。こいつらはいきなり現れることしかできないのか。
遠慮を知らない知能の低い俺付きのゴブリンが、クイクイとトレーナーの裾を掴んで俺に食事の知らせを伝えに来た。
あれ? でも俺、昼は食ったばかりで、食事はもう少し後のはず。なのに餌って……
「もしかして、おやつ?」
「う?」
どうやら、このゴブリンは俺の様子を見て何かを与えなきゃと思ったらしい。溜め息ばかりを吐いていたからな。
おやつという単語に首を傾げたが、それは甘い物? と尋ねると、ブンブンと首を縦に振った。
はじめは醜いだけの生き物に見えたゴブリンだったが、慣れとは恐ろしいもので、自分の背丈の半分くらいしかない鬼の顔をしたこの緑色の生き物がだんだんと可愛く見えてきた。物言いは端的だけど、俺の様子を気にしてあれこれと世話を焼いてくれる。あの「魔王」からの言いつけにしても、その行動は「魔王」のように鬱陶しくはない。
俺はゴブリンのツルツルとした頭を撫で、お礼を口にする。
「ああ、ありがとう」
ゴブリンは嬉しそうに微笑んだ。ああ、可愛い。まさか化け物に癒やされる日が来るとは思いもしなかったよ。
俺はゴブリンと共に部屋を出て、食堂へと向かった。「魔王」がいる時はだいたい自室で食事をとるが、今は主がいない上にだだっ広い屋敷は使い放題ときている。少しは歩かないと身体が鈍ってしまうから、と。俺は調理場からさほど離れていない食堂での配膳をお願いしていた。
スタスタと廊下を渡ると、中庭が見えた。力仕事に向いているオークが庭師のごとくそこを手入れしている様子が見られ、フッと笑みを漏らした。オークは棍棒でも振り回しているイメージしかなかったのに、なかなかどうして似合っている。
その後ろにはぞろぞろと、見かけない複数の魔物たちが集団となって立っていた。その先頭には、この屋敷を「魔王」の代わりに仕切ることを任されている鳥頭の魔物がいる。何かを彼らに説明している様子が見受けられるが、これはいったい……
「あれは?」
ゴブリンに尋ねると彼は立ち止まり、その魔物たちを指差しながら説明してくれた。
「しよーしゃ。まおーさま、あたらしーのがほしーって、いってた。ほじゅーした」
「補充……」
まだ使用「人」を雇うのか。今でも結構な数の魔物が働いていると思うけれど……うーん、わからん。十も満たないくらいの数の魔物たちを見渡し、頑張れよと静かなエールを送った。
しかし、そこに飛び込んできたのは……
「神、木?」
前世で、俺よりもずっと前に死んだはずの俺の友だち……神木がいた。
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