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第4話

   そんな話を聞くと、本当にふたりは親戚同士なんだと改めて思う。俊明の家が斯波の本家だそうで、そこから近所に嫁いだ彼の伯母の息子が大智だそうだ。ふたりは幼い頃から家も近所、学校もずっと一緒で育ったわりには、仲が悪い。  その理由はふたりの好みが似すぎていて、今までに好きになった女の子たちがまるかぶりだったからだという。ときにはひとりの女の子をふたりで奪い合い、ときには彼女に二股をかけられていたりと、これまでお互いがつねに恋愛の邪魔な存在となっていたそうだ。  今回も俊明と大智は同じ相手――潤太を好きになった。それで彼らは潤太を巡ってすぐにケンカをはじめてしまうのだが、いくらふたりが揉めようと潤太からしてみればラッキーな三角関係だ。贅沢を云えば大好きなふたりには仲良くしていてほしいのだが……。  ちなみにふたりには、暫らくはどちらかひとりに相手を決めずに、両方とつきあっていいと云われている。もちろん潤太はそんな話はするっと無視するつもりでいて、彼らとは暫らくではなく一生を添い遂げるつもりでいた。 「母屋(おもや)から駅までチャリで十五分。そこから電車で一時間半。さらにここまで徒歩五分。ホント、そのケーキ、運んでくるのに気ぃつかったわ。……それなのに」  キッチンで雑巾を洗っていた大智の言葉で、七号サイズのホールケーキの横に並べた皿たちに、みんなの視線があつまった。  そこには原型を失ったぐちゃぐちゃのロールキャベツやパイ生地とフィリングがすっかり分離してしまっているキッシュ、そしてどろどろの麻婆豆腐が盛りつけられている。まぁ麻婆豆腐においてはじめからどろどろしている食べものなので大差ないのかもしれないが、それにしてもそれらは悲惨な姿だ。 「たった三十分の距離を電車で運んできただけで、なんでこうなるかな?」  大智にぐさっとハートをひと突きにされ、潤太は「うえんっ」と胸を押さえた。 「で、でも味には変わりないって。へへへ」  ごまかすために笑ってみせると、今度は「食感は相当、違ってくるけどね」と俊明がちくりと刺してくる。確かに、彼の云うことはもっともだ。 「うううっ……」  大智にたくさんグサグサ云われるよりも、俊明に云われるひとことのほうが、どうしてか潤太にはダメージが大きい。しかしもとは心優しいのだろう、俊明はすかさず「吉野」とフォローをいれてきた。 「吉野は悪くないでしょ? だから気にすることないよ。だっていきなり抱きついた僕が悪いんだから」  肩を抱かれて耳の近くでそう云われると、潤太はあっという間に気分が浮上してくる。ついでに胸がきゅぅんとしたので、さっきとはまた別の理由で胸を押さえることになった。  なにであれ俊明の言動は、潤太に大きな影響を与えるようだ。一喜一憂するとはまさにこのことだろう。 「斯波せんぱい……」  甘えた声をだし俊明を見上げた潤太だったが、しかしすぐに大智に襟首を引っ張られて、またもやふたりはひき離されてしまった。どうやら汚れた廊下の掃除は終わったらしい。 「あぁんっ、もうっ! どうして大智先輩はいつもこう乱暴なんだよっ⁉」 「俺のまえでイチャイチャすんな! ほら、もう食おうぜ。とっくに昼すぎてんじゃん」  いいところを邪魔されてふくれつつも、壁にかかる時計を見ると十三時をまわっている。とたんに、潤太のお腹がグゥと鳴った。

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