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第22話

「ねぇ吉野。大智はなんでスカートのことを知っているの?」 「それは、そのとき大智先輩がいたからだよ」 「へぇ。――ねぇ、吉野。それも大智だけズルくない? 僕も吉野のスカート姿、――見たかったな」  この際、目の前のワンピース姿のことは触れないでおく。云わなければ潤太はいま自分がスカート姿を俊明に晒していることにも、俊明の話が矛盾だらけなことにも気づきはしないだろう。 「えっと……。ご、ごめんなさい?」  案の定、潤太はついに肩を落としてしゅんとしてしまった。申し訳なさそうな表情に可哀そうなことをしていると自覚するが、そこにつけいる隙があるのなら俊明はもうひと押ししてみたい。 「じゃぁ、僕にかわりのことしてくれる?」 「かわり? えっと、例えばどんなこと?」 「さっきから云っているじゃない。吉野を食べさせてほしいって」  内緒話をするようにして、潤太の耳に口を寄せて云うと、「でもだって、俺、食べるところないでしょ?」と、潤太に顔をぐいぐい押し返された。 「俺、男なんだし……」 「うーん。そうか……じゃあ、ケーキで我慢するしかないのかな」   いかにも妥協案だというように云ってみる。すると彼は安直に俊明の仕掛けた罠にひっかかった。 「うん。これ本当においしいから。ねね、先輩も一緒に食べよう?」 「だったら、せめて吉野が食べさせてくれる?」 「うん、はい。えっと、じゃぁ……」   潤太がテーブルへと膝でいざりながら寄っていく。彼がホールケーキの載った大皿とフォークに手を添えた瞬間を狙うと、俊明は彼の背後から真っ赤なワンピースの裾をくるっとたくし上げた。 「わあっ!」  肩甲骨まで露わになるように盛大に捲りあげたので、派手なパンツを纏ったお尻が丸見えだ。 「なにするんですかっ!」  振り返った潤太が俊明の手を振りほどこうとやっきになっているが、小さな乳首をふたつを晒して涙ぐむ姿に、俊明は喉の奥で笑う。ホントに写真にとれないのが残念だ。 「はっ、離してくださいぃっ!」 「ちょっ、吉野、あんまり暴れないで。ケーキ食べるんだから、すこしだけ我慢して」 「なんで、ケーキ食べるのにっ――うわっ!」  俊明は素手で大皿のケーキを掬い取ると、べたっと潤太の胸に擦りつけた。  火照った胸に塗られたケーキが、部屋いっぱいに甘いクリームとさわやかなフルーツの香りを充満させていく。 「ひゃぁっ、なっ、なにするんですかっ⁉」 「なにするって、ケーキを食べるんだよ。こうやって……」  逃げられないようにがっしり中腰の潤太の背中を抑えると、その胸をべろりと舐める。 「ひゃあぁんっ!」  これでもかというくらいに身体をのけ反らせた潤太は、 「やだやだやだーっ!」  そのまま腰を捻って腕のなかから逃れようとした。俊明も負けじと力ずくで彼を押さえこむ。潤太に鷲掴みにされた髪が痛かったが、それでもギャイギャイ叫ぶ彼に構わず薄い胸をぺろぺろと舐め続けていると、俊明の胸の位置にあった潤太の陰茎がどんどん硬くなっていくのがわかった。 「やっ、やめてっ、せんぱ……、くすぐったいってばっ、やぁっ――」 (擽ったいだけじゃないクセに)  俊明はさっさと潤太を床に押し倒し、細い身体にのっかかった。クリーム|塗《まみ》れの胸に顔を寄せ、そこから潤太を見上げた俊明の口角がつりあがる。そんなに瞳をうるうるにされちゃぁ――、 (ちょっと虐めてみたくなってしまうじゃないか)  潤太にたいするエッチな欲望に、加虐心まで加わった瞬間だった。はじめて見せた俊明の不敵な笑みに、潤太が小さく唾を飲みこんだ。

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