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第39話

「潤太が何人かの友だちに、平等にプレゼントを渡すとしたらどうする?」 「じゃあ俺、みんながおなじ大きさのうれしい気持ちになれるようにする」 「そっか。じゃあ、それが潤太の云う平等な」 「うん」 「お前、ちゃんと『もらう側の捉えかたが、平等性を大きく左右する』ってことがわかってるんだな」 「うん。平等になってるかどうかは、もらうひとの好みで変わるってことでしょ?」 「そうだな。『好み』や『価値観」だな」 「平等感ってつまり、与え手がどれだけ平等にしたつもりでいても、受けとり手の価値観次第で公平だとか不公平だとか、結果が変わってしまうんだよ」 「うん。わかるわかる」  潤太はふんふんと首を振る。  潤太が俊明と大智にいろんな平等を試しても、彼らの捉えかたのせいで、潤太の気持ちはそのままには伝わらなかった。 「でもそれって、お前にはむづかしいかもな」 「なんで? みんなをおなじくらいの量よろばせてあげるには、みんなにおなじものをあげるんじゃなくて、みんなにそれぞれ違うものをあげることになるってことでしょ? それでいいんだったら、けっこう俺はすっきりだけど?」  だって潤太はついさっきまで、俊明と大智ふたりにおなじことをしていかなければいけないのだろうかと悩んでいたのだから。またもや悩みがひとつ解決だ。 「俺ね。ふたりにさ、あっちにはアレしたんだろうとか、自分よりあっちのほうが好きなんだろうとか云われてさ。それだけでもギャーッてなってるのに。じゃぁ、ふたりにできるだけおなじようにしようって思って、したつもりなのに、なんか満足してもらえてないみたいで。ふたりとも云ってくること――リクエストが微妙に違うし。なんか最後のほう俺、責められている気分になってワーッてなった」 「たいへんだったんだな……」 「でもこれからはおなじにしなくていいってことにするから、もう平気」  彼らが自分といてハッピーになれるのならば、それぞれにまったく違う対応でいていいってことなんだから、 「ってことは……」 (斯波先輩とはまだエッチなベロベロキスに進まなくてもいいんだよ。暫らくはいっぱい手を繋いだりしておこうっと)  ふふふと笑って「たのしみ~」と呟いた潤太は、次に (それに大智先輩には乳首を舐めさせないでも大丈夫、大丈夫) と、胸に手を当てて「ホッ」と撫でおろした。 「これで、一件落着だ」 「なに云ってんだ? お前それまだ半分解決できていないじゃないか。おなじことをしてやっても、ふたりがおなじ満足を得られはしないってことがわかったところで、じゃあ、そいつらにおなじ満足を与えるにはどうすればいいか、そこまでちゃんと考えないと」 「むむ。なるほど。一也くん、奥が深いね」  たくさんあった傷の手当が終わったらしい。救急箱の蓋を閉じた一也は、ソファーに座る潤太の横に腰をおろしてきた。いつもの潤太ならこのあたりで逃げ出すところだったが、今回は大事な大事な恋人たちのことだ。潤太はもうすこし踏ん張れるようにと、今度は一也の酒のつまみなのだろうチョコレート菓子に手を伸ばす。封を切って、長いスティック状の菓子をポリポリ齧る。 「潤太、ちゃんと相手の好みや価値観を知っておいてやれよ? ふつうならよく観察して相手の性別や年齢とか、いろんな情報から推測していけばいいんだろうけど、お前はそれが下手なんだ。だからまったく見当ちがいのものをあげてしまうことになる」 「えぇっ、そうなの? そんなことないでしょ?」 「そうなんだ。だから冬休み中に、あそこのマトリョーシカ持って帰ってくれな」 「ええっ⁉」  一也が窓際を指さした。そこには潤太があげた人形軍があって、この地味な部屋のなかで、いちばんカラフルで賑やかしくひと目をひいている。

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