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【2020/05 友よ】⑬
そこに映し出されているのは、昔の2時間枠のサスペンスドラマでシリーズ化されていた有名な推理小説作品についての記述だった。主演は今は高齢であまりテレビ出演はしていない大御所の俳優で、主人公は警部という設定だ。
「あ、これ、週末になると再放送されていたりしますよね。交通機関を駆使した犯罪が起きるやつ」
「そう。あと、コレは知ってる?」
続けて出された検索結果は任侠映画についての記述だった。主人公は抗争で夫を喪った女性で、夫の敵を討つ話だ。
「知ってます、最近はあまりテレビでこういうやつ流さないですけど有名ですよね」
「案外知ってるもんだね。よかった、じゃあ話は早い」
あれ、今、何の話だったっけ。お互いの親の話をしてたはず。顔を上げると、スマートフォンの画面を消して、大石先生が言った。
「うちの親はこういう、テレビの中の人なの」
「え?」
あまりにさらりと言われて、頭が真っ白になった。言葉が出ない。主演の二人の苗字は、大石という姓に全く掠りもしないし、何より彼らはそれぞれ名のある芸能一家の出で、家庭がある人だったはずだ。その子息らも芸能人や業界人だったはず。
「長谷くんはそういうの口外しないだろうなって、勝手に信頼するから言うけど、一言でいうとまあ、色々不適切な関係があった末に生まれたおれだけ、他所に出されちゃった。それ自体は別にどうってこと無いんだけど」
「いやいや待ってください、どうってことなくないですか?」
突然とんでもない裏情報をいきなり開示されて、それをどうってこと無いと言われても、どうってこと有りすぎる。
「藤川先生も養子ですけど、大石先生も養子ってことですか」
「そう。それでね、問題は育った家でさ。両方の家から養育費たんまり貰ってんのに、おれがある程度大きくなったら最低限の小銭だけ置いて放置して、豪遊して遊び歩くようになってね。おれは最低限の食事しかできない状態になって、インフラも止まって身の回りのこともできなくなって、必要な教材費や給食費も払えなくて、教室に居づらくなった。玲と出会ったのはそういう時期だったんだよ」
訊こうと思っていた中学時代の話に、此処でつながった。
「玲は、教室にも行けない、家に帰っても何もできない、保護されるのを待つしかなかったどうしようもない時期に、おれを助けてくれた唯一の友達なんだ」
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