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【1989/05 komm tanz mit mir】⑧ (*)
よく見ると喉にあるような抉れたような傷はお腹にもいくつかあった。手術でもしたんだろうか。だとしたら何のために?飲んでいる薬の量からしても、何らかの事情があるのはわかるけど、詳しくは訊けてない。
「ハルくんどうしたの?」
しかも、裸の状態で全体を見ると、割と下半分は割とガッツリ体毛がある。上半身は腕に細い毛はうっすらあるけど全体薄くて、ワキも薄い。
そして相対的に見ると、やはり他の部分の成長と痩せ具合のアンバランス、性器だけ未発達に見えることと、やけに傷が多いことがどうしても気になってしまう。
「アキくん、いっぱい傷あるけどこれはどうしたの?」
薬のこと訊いたときも曖昧だったから、答えに期待はしていないけどできるだけ当たり障りないように訊いてみる。
「あのね、アキくん、病院にいたんだよ。起きたらいっぱい管がついててね、びっくりして全部取ったら痛かったけど、外見たら雪がいっぱい降っててね、ひとりで観に行ったの、そしたらねえ、うまく歩けなくていっぱい転んじゃった」
ああ、やっぱり入院はしてたんだ。それなりに重い病気してたのかな。でも、管が入っていたこととその箇所はわかったけど、そのほかの切りつけたような傷は何なんだろう。
「なんで病院にいたの?」
「わかんない、わすれちゃった」
アキくんは寒くなったのか、シャワーを出して浴び始めた。その途中で急に思い立ったように一旦扉を出ると、今度は自分の部屋だけでなく、キッチンまで行ってあれこれ持ってきた。
あーあ、これ、あとで拭いて回らないといけないやつだ。笑い事じゃないんだけど、思わず笑ってしまう。
「水が5、洗剤が4、液体のり1でシャボン玉つくれるんだよ、ハルくんも遊ぼ」
ご丁寧に計量カップまで持ってきたけど、それ食べ物量るやつだけど使っていいのかな。止めたほうがいいのか、そのままやらせていいのか判断がつかない。洗って戻して、バレて叱られそうだったら止めなかったおれも悪いって一緒に謝ろう。
洗面器に作った液体を手を浸して、指で枠を作って出来た膜に空気を吹き込んで遊ぶ。うまくシャボン玉になって、虹色に滲んだ球体が浴室に浮かんだ。
「アキくんはほんと物知りだね」
そう褒めると、照れ笑いしながらこちらを向いた。
「あとね、これで昨日みたいにすると気持ちがいいんだよ」
「え?」
アキくんはシャボン玉液で手を濡らしたまま、おれに近づいて性器を触れた。
「今日は、アキくんがしてあげる」
アキくんはおれの肩にそっと顎を乗せて体を密着させると、会陰の方から指を滑り込ませて擽った。アキくんの肩に手を添えて、そっと引き剥がすと両腕を脇腹に回して抱き竦められた。
「だめ、アキくんがするの」
耳元で熱っぽい吐息とともに、いつもより甘い声で囁きかけてくる。だめだとわかっているのに、体が反応し始める。もう逃れられない。
アキくんの指が会陰から陰嚢を指先で擽るように弄ぶ。腰から背筋をザワザワとしたものが這い上がり、息づいた先端が涎を垂らし始める。そこにアキくんの体が押し付けられて下生えが当たり、擦れる感触で刺激されて更に昂ぶる。
否応なく体は震え、体温が上がっていく。肩口から首筋、耳や頬まで熱い。その肩口から順にアキくんの唇が触れて、甘く吸って口付けては舌を這わせ、徐々に耳元に近づいて、耳介の外縁を尖らせた舌が滑る。
そして囁く。
「ハルくん知ってる?ペンギンってオス同士でも交尾ってするんだよ」
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