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【2020/05 速度と密度】⑩ (*)
「どうぞ、なんですか?」
おれも再び寝転んで目を合わせる。先生は真剣そのものだったけど、その内容におれは数秒後脱力した。
「長谷って結局ウケなの?タチウケ両方なの?」
グイグイ距離を詰めてくる先生の肩に手を添えて制する。
「え、えぇ…いいじゃないですか、そんな気にしなくたって…」
「なんだよ大事なことだろ?さっきあんな顔されたから気になってんだよ、何処までだったらおれはしていいの」
改まって言われると、何を何処までってのは説明しづらい。しているうちに互いになんとなくどうしてほしいか、何が好きで何が嫌かはわかってくるとは思うので、おれは態々言わなくていいかと思っていた。
「高校時代は最初相手が襲いウケだったからタチになると思ったんですけど、相手リバだったんですよ…だから一応は両方できますよ、でも、今はタチです…」
話しているうちに顔が熱くなってくる。おれが困り顔で答えるのを、先生はニヤニヤ見ながら質問を続ける。
「ふーん。ウケだったことって、卒業後は全く無いの?」
「…それは…あります…でも、行為としてはしたくても、なんかそういう時の相手の人って怖く見えて、やっぱりダメで」
先生はそこで「やっぱり、さっきおれのこと怖かったの?」と心配そうに訊いてきた。おれは正直に頷いた。
「なんであのとき、おれのこと怖がってたの?」
真面目な顔で先生が尋ねる。
「それは…色々あって、もう少し時間をくれませんか、今度ちゃんと話します」
「いいよ。とりあえずおれが長谷を相手にタチやるのは体格的に無理だし、気をつけるからさ。安心していいよ」
先生の不自由な左手がやさしくおれの側頭部を撫でる。触られると弱いところをそっと指先で探られ、耳の後ろから首筋まで電流のような刺激がじわりと広がる。
「おれからももう少し、訊きたいんですけど…」
「ん?何?」
先生の手が少しずつ滑り、胸の先の膨らみを転がすように撫で始めると、再び下半身が疼き始める。
「思春期早発だって聞いたんですけど、先生の性器が十分発達していないように見えて、どうしてなのかなって」
「思春期早発で早く成長はしたけど、結局餓死しかかったからその時に急激に萎縮して種無しになっちゃったんだよ。小さいとつまんない?…挿れてみたかった?」
やさしく摘んで柔く揉まれ、声が出てしまう。息荒くなり始めたおれの唇を先生が薄い唇で塞ぎ、甘咬みする。
「いえ、むしろ、なんか、わるいことしてるみたいで、すごく燃える…」
正直今まで、自分にこんな性癖あると思ってなかった。先生の、表情や仕草に妙な色気があるのに身体が少年ぽいところとか、狡い大人の態度なのに実年齢よりうんと若く見えるところとか、こんなふうに惹かれると思っていなかった。
「悪いことってなんだよ、長谷、悪いことしたかったの?」
先生の手が再び脈打って膨張するおれのものに手を添えて、その先端を掌で触れるか触れないかの感触で撫でる。たまらなくなって先生を抱き寄せ、きつく抱きついた。溢れ出る体液で先端を包むように濡らしながら柔らかい指と掌が責める。
重なる唇の間を互いの舌が行き来して柔らかい口内を貪る。先生が流れ込むものを喉を上下して飲み込む。おれは、おれのものを弄ぶ先生の手の上から握って扱いた。
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