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【2020/05 不時着】⑪ (*)

互いに脱力して、つばさは浴槽に持たれたまま、おれはそのつばさの体の上に凭れかかったまま暫くいると、体についていた水分が気化して熱が奪われて冷えてきた。出しっぱなしで洗い場の床に置いたままになっているシャワーヘッドを拾い上げて、軽く浴びてからつばさの体に向けた。 落ちかけていた意識を取り戻して、浴槽の縁に手をかけて体を起こしながら「ありがと」と手を出して微笑む。シャワーヘッドを手渡すと、広げた脚の間に当てて洗い流す。おれが中で放ったものが後孔から溢れ、排水口に流れていった。 「お風呂、一旦溜めて温まります?」 浴槽の縁に引っ掛けてあった栓の鎖を摘んで訊かれ、おれは「じゃあ、そうしよっかな」と答えて栓をした浴槽の底にシャワーヘッドを置き、おれは浴槽の縁に腰掛け三角座りしているつばさの足元に脚を下ろした。 「なんか、ごめん、本当にがっついて」 冷静になってみると、本当に今日は我ながらひどい。改めて謝った。 「ふふ、本当に謝ってばっかりですよ?どうしたんですか、余裕ないって言ってましたけど、本当に」 おれはできるだけ肝心な部分や重い話は端折って、ぼかして、何重にもオブラートに包むようにして概要だけ話した。 この春好きな人ができたこと、その人が色んな人と肉体関係を持っていること、でもそれを承知で一緒に暮らすつもりでいたこと、ちょっとした問題があってそれがどうなるかわからないこと。 そしてその人が過去酷い目に遭っていて、多分あまり正気じゃないこと。それがわかる出来事があって昨日動揺して応じられなかったこと。 今日呼んだのは気を紛らわすためだったんだけど、不完全燃焼だったのがやっぱり良くなかったみたいで、お店で許容されている範囲で今日は済ませるつもりだったのに破ってしまったこと。 ひとしきり話し切って、もう一度謝ると、つばさは立ち上がっておれの頭を胸に抱き寄せてやさしく撫でた。 「…そのお相手の方って、お若い方なんですか?」 「ううん、うんと年上で、15違う」 「えっ」 年齢差を聞いて素直に驚いている。多分つばさのプロフィールには23とあったけど、顎の形から見て実年齢はもう少し、2~3歳は上だろう。でも、まだ若いだけに変に擦れた感じはない。顔立ちは特別整っているわけではないし地味めだが、穏やかそうな柔和な可愛い顔をしている。 「その人とは、これからどうするんですか?」 「うん、正直、おれは諦めたくないんだ、初めて、おれを選んでくれた人だから、でも…先が見えなくて、どう向き合って良いのかわからなくなってきてる」 目の前にある、先生と同じくらいの背丈、体型は違うものの先生と同じくらいの細さの体。顔を見ず、目を合わせなければ先生を思い出してしまう。浴室でするのが好きなことも。 浴槽の中に目線を落としていると、つばさがしゃがんで、膝を浴槽について座り、おれの顔を下から覗き込んだ。 「気を紛らわすため呼んだんですよね?じゃあ、今日はおれが忘れさせてあげる、全部」 おれの膝頭に手をかけて、拡げるよう促すと、その間に顔を寄せて先端に口づけ、舌を這わせ、口内に誘い入れ、含んだまま中で舐り、時折舌先を鈴口に挿して擽った。膝に添えていた手が腿の裏側から膕、脹脛から踝まで、指先を少し立てて掠めるようにして行き来する。 達してからまだ時間がそんなに経っていないから擽ったく感じる。反面、丹念に奉仕するつばさがどうしようもなく愛しく見え、再び興奮が蘇ってくる。 顔を傾けて、根本から丁寧に何度も往復して舐め上げて、その下にある膨らみまで口いっぱい含んでやさしく転がして愛撫されて昂ぶりが抑えられなかった。 「続き、ここでする?」 顔を上げて小首を傾げて訊かれ、首を横に振る。溜めかけていた浴槽の栓を抜いて上がり、風呂場を出て、洗濯機上のラックにあったタオルで簡単に互いの体を拭いて、居室備え付けの簡素なシングルベッドに向かった。

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