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【2020/05 葬列】②
おれが送られてきたリンクや動画を見ている間、お母さんは一言も言葉を発さずに待っている。
暴対法が強化されてから暴力団の行事に関する報道は一般的な情報媒体には乗らなくなり、既に指名手配されたり破門状を回されてるような末端の逮捕や、一般人を巻き込んだ事件や組織的犯行の裁判でない限り大きく取り上げられることもなく、大々的に儀礼が行われることは随分減った。
一時期よくネットでネタにされてたような事務所のガサ入れとか銃火器等の押収物の公開も、違法薬物生成や違法植物の栽培現場やその手法報道も、最近は良からぬことを企むための情報を与えかねない、悪用されかねないため報道しないことが多い。
最初の、当初無関係と思われたであろう大学構内の発砲と、直人さんが殺されたこと事態は報道されるのは別に問題視されることではなかっただろうけど、その後内輪でひっそり弔われたにも拘らず葬儀について一般報道されたとことについては警察は問題視しているだろう。
おそらく報道機関には釘を刺して回っているだろうが、それでも直人さん殺害に絡んだ報復と、小角昭文が出所したこと、その息子がナンバー2になったということまでも引き続き報道されているというのは、事態が事態であるいうことが物語られている。
日曜に直人さんが死んで、遺体と対面して、先輩と警察に行って聴取に応じて、先輩とホテル泊まって。次の日消息不明だったふみが来ておれを殴って抱いて、火曜の朝に出ていった。水曜に急遽被災地支援を指示されて移動してきて、そして今日のこれだ。
緒方先生の機転がなかったら、あのまま都内に残っていたら、おれも居場所探られて隠し撮りされたり待ち伏せて直撃されたりして追い回されてた可能性がある。
詳しい状況はわからないが、日曜おれたちが遺体と対面した後、遺体と対面する前に由美子さんはまず背景を知らないか聴取に呼ばれて、おれのときと同じく元検事の顧問弁護士伴って応じ、早々に終えてから一旦遺体を引き取ったのだろう。
あと記事にある「その日のうちに荼毘に付された」というのは絶対に間違ってて、実際は月曜でないと役所にそのための手続き自体できない。その日一晩は自宅に安置し、遺体を引き取る時呼んだ葬儀屋に相談して火葬のできる民営の葬儀場に予約をとったり、葬儀の準備を進めていたんだと思う。
月曜に出所してきたふみの父親を迎え、内々に組織の引き継ぎを指示。役所に手続きをして書面を揃えてから葬儀場に運んで焼いてもらってお骨を持って戻って、火曜日の葬儀に合わせふみの父親が連絡をとってなんとかふみが戻り、葬儀を実施。
その最中に報復とみられる事件が複数同時発生。ふみが搬送後すぐ姿を晦ましたのはおそらくこの報復の準備のためだったはずだ。
水曜日になって、ふみが元検事の顧問弁護士伴って聴取に応じたものの、姿をくらませてたが故に、そしてその間に報復とみられる凄惨な事件があったため、未だ執拗な聴取を受けているだろう。
警察側のその疑いは多分正しいのだが、ふみが直接手を下した訳でないことは把握していても、実行した連中にふみが犯行を指示した証拠になるようなものは見いだせていないからあくまでも参考人にしかできないだろう。
実際逮捕されたという情報はない。逮捕はできない。
しかもヤメケン弁護士がついているので強引に詰めるようなことも、とりあえず状況の流れだけで罪をかぶせることも出来ない。このまま嫌疑証拠不十分でふみはそのうち解放されると思う。
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