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兄の帰宅

ため息が無意識に漏れた。 部屋に戻ると三春がまだいた。 「えっと…俺、帰るわ」 「うん。送る」 「いいよ、俺の方が大人だし」 あ、余計なこと言ったかも…。 「そうだね。玄関までならいい?」 「あ、あぁ…」 気まずい…というより、気はずかしい? さっき色々しちゃった後で、キャパオーバーだった。 「真琴さん、土曜日会える?」 「あ、土曜日…約束だもんな…いいよ」 「無理してない?」 「べ、別に!?そんなことないよ…ただ、恥ずかしいってだけ…」 「そっか。じゃ、土曜日約束ね?」 「あぁ」 門の外まで出てくれた三春にぎこちなく手を振り背を向ける。 あぁ、本当に、恥ずかしい…! こんなの癖にならない方がおかしくないか? セックス自体初めてだった。 初体験で後ろの良さを先に知ってしまったら戻れないだろうが。 チラッと振り返った先で、笑顔で手を振ってくる三春が見えた。 あいつ、俺が見えなくなるまでいる気か? 風邪ひく前に家入れって。 俺はなるべく早足に家へ向かった。 「ただいま」 「おかえり。お前、今日の俺の授業、聞いてなかっただろ」 「兄貴!なんでいんの?里帰りには早いだろ」 「たまにはな。俺だって親孝行くらいする。メシ作ってやってんだ、感謝しろ」 「あ、母さん遅いのか」 「そういうこと。代わりに面倒みろと。そんな歳でもないだろうに」 「さんきゅ…兄貴」 「あぁ。着替えてこいよ」 兄はうちの学校で働く教師だ。『低い声でいてよく通り、耳によく馴染み眠たくなるような声』の先生とは兄のことだ。 制服から部屋着に着替え、リビングに戻る。 「なぁ、兄貴ー。兄貴って今、恋人いんの?」 「…なんだ?藪から棒に。俺に恋人が居たらなんだっていうんだ?」 「や、別に。うん、ちょっと聞きたかっただけ」 「…お前、いつも言葉足らずって言われないか?恋人いるけどそれが?」 「言いたくなかったらいいんだけどさ、今の恋人って男?女?」 「あー、なるほどな。言いたいこと察した。ちなみに相手は男」 兄貴は聡くて、そのおかげでツンデレの恋人とも上手くやれるほど先読みが凄い。 同じ人間とは思えないほどで、尊敬している。 兄貴とは別の生まれなんじゃないかってたまに思う。

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