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白鷺(しらさぎ)21 side楓

「うわっ…なに、これ…」 スッキリした気分で目が覚めたら。 真っ先に、自分の周りに散らばっている服の山が見えた。 しかも、それは全部蓮くんの服で。 それの殆ど全部に、白い汚れが点々と付いている。 俺は呆然とその惨状を眺めながら、朧気な記憶を手繰り寄せた。 えっと… 確か、予定より早くヒートが始まって… 蓮くんがいなくて不安で寂しくて 匂いだけでもいいから、蓮くんを感じたくて クローゼットを開けて、蓮くんのスーツを取り出したのまでは、ちゃんと覚えてるんだけど…… 俺、もしかして巣作りとか、してた…? しかもこの白いのって… もしかして もしかしなくても… 俺の、ナニ、だよね…? 「っ、わーーーっ!」 ぶわっと沸いた羞恥心に、慌てて服をかき集めると。 ガチャっとドアが開いて、携帯を耳に当てた蓮くんが顔を出した。 「…ええ。わかりました。ありがとうございます。…はい。ヒートは終わったので、明日は大丈夫です。…はい、では明日の14時に。よろしくお願いします。失礼します」 電話中だったのかと慌てて口をつぐみ、かき集めた服を胸に抱いたまま、固まっていると。 蓮くんは柔らかく微笑んで、通話を終わらせて。 「おはよ」 朝の光よりもっと爽やかなオーラを纏いながら、ベッドに腰掛け、俺の頭を撫でる。 「お、おは、よ…」 なんとなく気恥ずかしくて、正面から蓮くんを見られなくて。 腕に抱いた服に顔を突っ込みながら挨拶を返すと、蓮くんの優しい香りに混じって、青臭い匂いが鼻をついた。 「…ごめん」 「なにが?」 「…服。いっぱい、汚した…」 「なんで、謝るの。俺は嬉しかったけど?」 「ええっ!?」 蓮くんの言葉に、びっくりして顔を上げると。 蓮くんは嬉しそうに目を細めながら、俺の頭を引き寄せ、顔中にキスの雨を降らせる。 「巣作りしてくれてるの、嬉しかった」 「そ、そう、なの…?」 本当に嬉しそうに笑って、最後に唇にしっとりとキスをくれて。 俺がおずおずと舌を出すと、すぐに掬い取ってくれて。 そのまま舌を絡め合って、深いキス。 「…寂しかった?」 「…うん」 「ごめんな。一人にして」 「ううん…」 「でも、楓が初めて巣作りしてくれたから、出張行ってよかったかも」 「えーっ?そうなの?」 「うそうそ。俺も寂しかったよ。楓に会いたくてたまらなかった。仕事なんて放り出して帰ろうかって、何度も本気で考えた」 「…それは、ダメ」 「ダメか」 「ダメだよ」 キスの合間に、会話を交わして。 笑顔のまま、また舌を絡める。 そんな些細なことが ヒートが終った後 こんなにも穏やかで満ち足りた気持ちで朝を迎えられることが 震えるくらい幸せだと思う 「…シャワー、浴びてきたら?簡単なものだけど、朝食も用意してあるから」 「うん…でも、もうちょっとだけ、キスしたい」 長いキスを解いて、そう言った蓮くんの肩を。 俺の方から、もう一度引き寄せた。

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