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白鷺(しらさぎ)22 side楓
スーツはクリーニングに出すことにして、それ以外の服とシーツを洗濯機にぶちこんで。
回してる間にシャワーを浴び、さっぱりした気分でリビングへ戻ると、蓮くんはまたどこかへ電話してた。
「ああ。その方向で頼む。…いや、そこは気にしないでいい」
その声は、聞いたこともないくらい低く。
横顔は、見たことないくらい冷たくて。
思わず、ドアの側で足を止める。
だけど、俺が戻ってきたことに気が付くと、ふっと表情を緩めて。
優しい眼差しを、俺に向けた。
「…わかった。詳しいことは、明日菊池さんを交えて話すことになってる。…ああ。じゃあ、今日までよろしく頼む」
そうして、俺に向かって歩いてきながら、電話を切って。
携帯をポケットに突っ込むと、蓮くんは両手で俺の頬を包み込んで、そっと唇を重ねた。
「髪の毛、びしょびしょじゃん。風邪引くだろ」
優しい眼差しでそう言って、首に掛けたままだったタオルで、濡れた髪を拭いてくれる。
「…ごめんね」
「なんで謝ってんの?」
「だって…俺のヒートに付き合ってる間に、なんか仕事でトラブルあったんでしょ?」
されるがままの体勢で、さっきの厳しい顔を思い出してると。
蓮くんは、もう一度俺にキスをして、頭をポンと軽く叩いた。
「トラブルじゃないよ。それに、俺は楓のヒートをめちゃ楽しみにしてるんだから、謝る必要ない」
「た、楽しみ!?なんで!?」
「だって、誰憚ることなく、仕事を休んで楓とイチャイチャ出来るんだぞ?これが楽しみじゃないわけないだろ」
俺の想像の斜め上をいく回答に、返す言葉を失って。
ポカンと蓮くんの顔を見返していると、蓮くんは楽しそうに笑う。
「それに、ヒートの時は滅多に見られない可愛い楓がいっぱい見られるし。自分でお尻広げて、おねだりするところとかさぁ…普段の楓じゃ、滅多にやってくれないからなぁ」
「な、な、なっ…」
俺、そんなことしてんのっ…!?
「もっと、っておねだりは、いつもしてくれるけどさ。ヒートの時はもっと具体的に、かきまぜてーっとか…」
「わーーっ!もういい!やめて!」
恥ずかしさに、慌てて両手で蓮くんの口を塞げば。
目だけで、ニヤリと笑ったのがわかった。
「…俺を揶揄って遊んでるでしょ」
じとっと睨むと、笑ってまた俺にキスをする。
「そんなことないよ。でも、大胆な楓も好きだけど、やっぱこうやって恥ずかしがってる楓が、一番可愛い」
「やっぱ、揶揄ってんじゃん!」
「違うって。ほら、早くご飯食べよう?一週間、まともな食事してないから、腹減ったろ?」
蓮くんはそう言って、俺をエスコートするように腰に手を当てた。
誤魔化そうって魂胆は見え見えだけど、ご飯の話をされた途端、俺のお腹がぐーっと鳴って。
俺は仕方なく、本当に仕方なく、蓮くんに従うことにした。
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