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番外編 Robin(ロビン)1 side蓮
注)この話は、白鷺と大水薙鳥の間のお話になります。
まだ凪と櫂は生まれてません!
「ねぇ、れんくん」
くいくいっと袖を軽く引かれて。
俺は向かっていた問題集から顔を上げた。
すぐ横には、どこか困ったように眉を下げた楓が立っている。
「どうした?」
いつもは俺が勉強している横で黙って楽譜を見ている楓が、勉強を遮ってまで声をかけてくるなんてどうしたんだろうかと少し焦りながら聞き返すと、下がっていた眉をますます下げて。
「あの…あのね…くりすますって、なぁに?」
考えてもみなかったことを、訊ねてきた。
「え…クリスマス…?」
「うん。きょう、はるくんがね、もうすぐくりすますだからたのしみだねって。かえではくりすますはなにするの?ってきいてきたんだけど…ぼく、くりすます、しらないから…」
しょんぼりと肩を下げた楓は、すごく悲しそうで。
俺は思わず、その肩をそっと抱き寄せた。
「クリスマスっていうのは、日本ではキリストの誕生日だと思われがちなんたけど、聖書なんかではイエス・キリストの正確な誕生日についての記述は残されていなくて、キリストの誕生をお祝いする日、とされているんだ。つまり、正確な誕生日ではないんだよ。それに、古代のキリスト教ではキリストの誕生日よりも、十字架にかけられた後に復活した日を重視されていたと言われてて…」
頭の中の知識を掘り起こしながら、何気なく楓の顔を覗き込むと、呆気に取られたようにポカンと口を開けて俺を見上げてて。
「あ…えっと…」
その瞬間、求められている答えではないものを口にしてしまったのだと気がつく。
「つまり、クリスマスっていうのは…」
そうして、頭をフル回転させて、楓が理解できそうな言葉を探して。
「…大切な人と一緒に過ごす幸せな日のこと、かな?」
若干的外れのような気もしつつ、そう答えた。
「たいせつって…?」
「一番大好きな人だよ」
「…だいすきな…ひと…」
俺の言葉を反芻した楓の顔が、瞬時に曇る。
その頭のなかに誰が浮かんでるのか、手に取るようにわかったから。
「お、俺は、今年のクリスマスは楓と一緒にいたいなっ」
その面影を掻き消したいと、慌ててちょっと大きめの声を出した。
「え…?」
「俺は、楓のことすごく大切で大好きだから。楓は?俺とじゃ、嫌かな?」
手を伸ばして、そっと浮かんだ涙を指先で掬うと。
「…ううん…」
楓は湿った俺の指をぎゅっと握って。
「ぼく、も…れんくんといっしょに、くりすます、したい」
ふわりと、天使の微笑みを浮かべた。
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